2020.03.10

現代女性は「メンヘラ&メルヘンの解放」を求める? 『ミッドサマー』のヒットにみる隠れた欲求

2020年2月に日本で公開されたアリ・アスター監督作品の映画『『ミッドサマー』(Midsommar)』。

衝撃的でグロテスクなトレーラー映像や、マニアックな映画ファン向けのカルト映画のような宣伝内容にもかかわらず、なぜだかSNSの口コミの影響で20代、30代の若い女性たちが映画館に殺到しているようです…。

泣き叫ぶ女性の絵

(ネットで公開されている映画のワンシーン。女性がこれでもかという勢いで泣き叫んでます…。)

若い女性と、カルト映画…。その結びつきと人気の理由を探ってみました。

カルト映画「ミッドサマー」が若い女性に人気な理由

私たち株式会社デコムの運営しているサービス「Trend banK」に、『ミッドサマー』の人気の理由に迫れそうな事象を幾つか発見しました。

その前に映画のあらすじを。

大学生のダニーは精神的な疾患を抱えていた。ある冬の日、同じく精神疾患だった妹が両親を巻き添えに無理心中してしまう。自身の疾患と家族を失ったトラウマに苦しみ続けるダニーを、恋人のクリスチャンは内心重荷に感じながらも、別れを切り出せずにいた。

翌年の夏、ダニーはクリスチャンと一緒にパーティに参加した。席上、彼女はクリスチャンが友人のマーク、ジョシュと一緒に、同じく友人であるスウェーデンからの留学生・ペレの田舎町ホルガを訪れる予定であることを知った。クリスチャンはペレから「自分の一族の故郷で、今年夏至祭が開催される。夏至祭は90年に1度しか開催されないので、見に来てはどうか」と誘われたのである。文化人類学を専攻するクリスチャンは、学問的関心もあってホルガ行きを決めたのであった。

ホルガを訪れたダニー一行は、幻想的な風景と親切な村人に初めは魅了される。ところが、夏至祭はただの祝祭ではなく、ペイガニズムの祭りであった。そうとは知らずに参加したダニーたちは、不安と恐怖に苛まれていく。
Wikipediaより引用

ひとことでまとめてしまうと、大学生たちがバケーション感覚で民族の祭りを体験しにいったら、気づいたら変なできごとに巻き込まれていくというパニック・スリラー系映画です。ネタバレ厳禁の映画ですので詳しい内容については是非映画館でご体験ください。

さて、トレンドバンクの事象をみてみましょう。

トレバン事象1

新潟の19歳の女の子の事象です。家の鏡の前で無我夢中で踊りまくることで、日常の不条理で溜まったストレスを発散しています。

この事象からは若い女性の「抑圧された感情の行き場」がみてとれます。誰にも言えないようなうっ憤のやり場を自らの野生的・身体的な行動によって作り出しています。

SNSに愚痴を書いても満たされない感情を、思う存分表現することで、「喜び」に転化するこの勢い。女性の持つエネルギーが凝縮された事象です。

 

トレバン事象2

さらにもうひとつ。こちらも新潟県の若い女性の事象です。風俗店でアルバイトをする女性の日常が垣間見えます。(トレンドバンクならではの体験ですね…)

暗い部屋、アロマキャンドル、絵本、ぬいぐるみ、といったメルヘンチックなモチーフに囲まれた自分だけの世界で、誰にも影響を受けない静けさを感じています。

日常から離れたメルヘンチックな趣味に、日々の精神的なダメージの救済のための工夫が見られます。

現代女性に潜む「メンヘラ&メンヘル」的マインドの解放欲求

『ミッドサマー』の主人公も、家庭の事情や彼氏との関係性の中で精神的な疾患をもっています。

その主人公が、田舎の祭りで行われる様々な儀式を通じて、心身に様々に変化が起こっていく様子が描かれます。強制的な田舎の文化・儀式への参加を通じて、主人公自身も気づいていなかった感情が解放されていき、壮絶なラストを迎えます。

Twitterでの女性の感想を見てみると、「ラストの解放感でなぜか泣けた…」というような、救済・解放的な感動を感じている方が多くいるようです。

ここには抑圧されている言葉にならない精神的な衝動の解放への無意識な共感がみてとれます。

感情的な行動で周囲を困らせてしまう女性のことを「メンヘラ女子」と揶揄する文化がありますが、その女性の感情的な行動をビジネスに結びつけた例があります。

トレバン事象3

「メンヘラ」的エネルギーをそのまま企業してしまう…。これこそ現代的な女性に潜む強烈さではないでしょうか。

映画の中でも、物語を進める主体となっているのは常に女性なのがわかります。調子に乗っている男性はどんどんと悲惨な最後を迎えることに…。

さらに『ミッドサマー』には映画の中で、様々な絵画が登場します。映画の冒頭で現れるのがこちら。

トレバン事象4

まるで絵本のように鮮やかに物語の全体が描かれています。これらのモチーフがふんだんにデザインされた映画のパンフレットも、異例の売り切れ続出だそうです。

こうしたメルヘンチックかつ秘術的なこの映画の要素も、女性ならではの無意識的な救済につながっているのかもしれません。

現代的な女性像として、子育てをしつつも働き続ける女性、キャリアを登り詰めていく女性、趣味をプロレベルまで昇華する女性など、存分に輝き才能を発揮する様子が描かれます。

しかしその一方で輝かしい女性像の陰には、日常的な表の生活では解消できないような精神的エネルギーの蠢きが潜んでいるのではないでしょうか。

女性の社会的な進出の裏で抑圧されつつある、「感情的になること」、「非日常に離脱すること」、それらを直接的に表現し、表現させてくれるものごとが必要とされています。

映画『ミッドサマー』は、「メンヘラ&メルヘン」な部分に光を当てることで、現代的な女性だからこそ抑圧されているエネルギーへとアプローチし、救済を生んでいるからこそ若い女性にヒットしているのです。

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