マウンテンバイクは、なぜ成熟した自転車市場でカテゴリー創造ができたのか?
成熟した市場では、人々の新奇性のある事象(=マイクロトレンド)に着目することで顧客が潜在的に求めていることを理解し、そこから新商品のアイデアを見い出すことができます。
例えば、マウンテンバイクです。
1970年代にアメリカの西海岸で、一部の若者がオンロード用の自転車に太いタイヤやサスペンションを取り付けるなどの改造を行い、山道を走って楽しむ、ということを始めていました。
その様子を見たスペシャライズドという会社が、1982年に大量生産を始めました。
当時は、一部の若者だけの遊びでしたが、そのことが全米の人々にも潜在的に求められていて、拡がっていくのではないかと考えたのです。
従来は「普通の道を手軽に早く移動できる」という価値しか与えられていなかった自転車に対して、「山遊びを楽しむ」という新たな価値を設定することで、「マウンテンバイク」というカテゴリーを創造しました。
そして、2000年には、米国国内自転車市場の65%(小売金額ベース)を占めるほどになりました。
このように一見、成熟した市場に見えた自転車カテゴリーにおいても、人々の新奇事象(マイクロトレンド)に着目することで顧客が潜在的に求めていることを理解し、成功することができるのです。
世の中のさまざまな新奇事象(マイクロトレンド)は玉石混交で、見極めが難しい
ただ、ひとつ問題があります。
ロジャースが提唱したイノベーター理論(1962)で述べているイノベーターが、ある事象に対してイノベーターであったかどうかは、事後的に確認できるだけで、それを
普及の初期の段階で特定することは難しいのです。
つまり、世の中のさまざまな新奇事象(マイクロトレンド)には、着目に値するものとそうでないものがあり、それを見極めることが難しいのです。
「それって、単に変わった人の変な行為であって、多くの人々に共有した欲求を表していないのでは?」という疑問に答えなけば、投資の意思決定をすることはできません。
言うなれば、玉石混交の新奇事象(マイクロトレンド)から「玉」を見つけたい、「石」を掴まされたくない、というビジネスニーズに応えるのが、今回ご紹介する「玉度(ギョクド)」という計量的な指標なのです。
玉度を使えば、市場機会の見極めが可能に
この玉度が明らかになれば、数多ある新奇事象(マイクロトレンド)の中から、着目すべきものを見極めることが可能になるのです。
玉度は、魅力度と未充足度のふたつの軸で構成されるモデルです。
ある新奇事象(マイクロトレンド)に対して消費者が「魅力に感じるか」という評価軸が魅力度です。
同じく、ある新奇事象(マイクロトレンド)に対して消費者が「一般に広く売られている商品やサービスでそのことは十分に充たされていると思うか」という評価軸が未充足度です。
この玉度はデータをもとに導かれます。魅力度と未充足度に関する評価は、一般消費者に対してアンケート調査を実施し、新奇事象(マイクロトレンド)に対する5段階の尺度を用いて得点化されます。
得点化された魅力度と未充足度の2つのスコアを用いて、2軸4象限に分けて、それぞれの新奇事象(マイクロトレンド)を評価します。
魅力度が高く、未充足度も高い新奇事象(マイクロトレンド)は、「玉」ではないかと判断できます。
一方、両方のスコアが低い事象は、「石」だと判断して捨てることができます。