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「ONE TEAM」は、なぜ国民をも巻き込む求心力をもったのか?

「現代用語の基礎知識」選 2019ユーキャン新語・流行語大賞の年間対象は、「ONE TEAM」が受賞しました。「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」の公式キャッチフレーズで始まったラグビーワールドカップ2019日本大会。当初、誰がここまでの盛り上がりを想定していたでしょうか。

日本代表は開幕戦のロシアに勝利すると、アイルランド、サモア、スコットランドを撃破して、破竹の四連勝で史上初の決勝トーナメント進出を決めます。

日本代表を率いるジェイミー・ジョセフヘッドコーチが掲げたテーマが「ONE TEAM」でした。7カ国15人の海外出身選手を含む31人の日本代表は、リーチマイケル主将を中心に結束。その象徴が「ONE TEAM」というフレーズだったと考えます。

なぜ「ONE TEAM」はここまで多くの消費者に受け入れられたのでしょうか。どのような価値が隠されているのでしょうか。私たち株式会社デコムのIATチーム(Insight Analytics Team)が調べてみました。

「ONE TEAM」が受け入れられた理由

私たち株式会社デコムの運営しているサービス「Trend banK」に、「ONE TEAM」の人気の理由に迫れそうな事象を幾つか発見しました。

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この事象から、チーム内でほとんど見向きもされない日陰の存在であったとしても、意義を感じていると伝わってきます。誰もやりたくないことを、誰も見ていない中で、自ら進んでやる人間の凄さに価値を感じていると言えるでしょう。そういう人もいるのです。

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この事象から、他を受容することで違う自分が出来上がる感覚を持っていると分かります。人間の本質的な孤独さ、自分と全く異質の存在を混ぜなければ何にもなれない悲しさを感じます。一体感とは、交わりあった人間こそ味わえる「自分だけど自分じゃない感じ」と言えるでしょう。

2つの事象から「役割」「一体感」という価値が垣間見れます。

特に2019年は「役割」が1つのテーマになりました。樹木希林さんの著書「一切なりゆき」は150万部で年間ベストセラー1位を獲得しました。著書を読むと、主役になるだけが全てでは無いと分かります。他人と比べず、抗わず、戦わずに、ただ自分の役割を果たすことの重みというか、覚悟のようなものを感じました。

与えられた場所で咲く、という言葉があるように、誰にだって役割があって、その場所で一生懸命に頑張るって素敵なことだと改めて認識された1年だったのではないでしょうか。

それぞれの役割を全うすることのクールさ、カッコよさ

「ONE TEAM」の人気の理由は、日の目を浴びない役割にも向けられた目線の多さにあったのではないでしょうか。ウオーターボーイや最終的に代表に入れなかった選手も含めた「ONE TEAM」だからこそ、より多くの共感を生んだのだと考えています。

たとえ影にいたとしても、与えられた役割を全うする美学に、クールさを感じた人は多いはずです。

加えて、今までの「一致団結」「一枚岩」と大きく違うのは、異なる人種も含んで様々な能力を持つ集団だった点です。同質の人間が並んだら、ここまで盛り上がらなかったかもしれません。有り体に言えば「ダイバーシティっぽい」し、「でも同じ目標に進んでいる感じ」という違和感が逆に魅力的だったのではないでしょうか。

「ONE TEAM」という言葉が持つ価値とは「同じ目標に向かって、異質な人間たちが陰に陽にそれぞれの役割を全うすることのクールさ、カッコよさ」ではないでしょうか。今っぽいし、でも昔ながらの熱血さもある。そうした懐かしさと新しさが、あらゆる年代を巻き込んで爆発的なパワーを発揮したと洞察します。