SNSのネタ画像はなぜバズるのか ~テンプレ画像になるための条件を紐解く~ | 株式会社デコム
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SNSのネタ画像はなぜバズるのか ~テンプレ画像になるための条件を紐解く~

みなさんはネットでよく見るネタ画像をご存じでしょうか。拡散されるごとにコラージュされたり、新たなセリフやテロップが付け加えられる、はたまた「どっちがお好きRT or Like」と問いかけ、多くの議論を生み出し、最後には何が元ネタか分からなくなるほどに馴染んでしまっているそんな画像たちです。

今回の記事ではそのように多くの人の間で親しまれ、使いまわされるような状態となった画像の事を、ネット上の“テンプレ画像”と呼称し、この特徴を紐解いていこうと思います。

圧倒的な注目度と拡散力を誇る“テンプレ画像の条件”を分析していってみましょう。

ネタ画像の紹介

まず、大量拡散され、テンプレ画像となったネタ画像を紹介したいと思います。
ネタ画像は派生が多く、残念ながらここで全てを紹介しきれないため、検索キーワードを載せておきました。ぜひ検索してみてください。

日本で流行った“テンプレ画像”

アデリーペンギン キーワード:「アデリーペンギン」「ネタ画像」 流行期間:2013年末-2014年7月ごろ

アデリーペンギン

複数のペンギンがヒナを責め立てている様子にフキダシをつけたコラージュ。
原稿に追われた同人作家や、大学教授に詰められながら修論を発表する学生など様々なパターンがある。
元ネタは産経ニュースが2012年に掲載した、アデリーペンギンの成鳥がヒナをいじめる写真。

引用元
URL(左):http://photo.sankei.jp.msn.com:80/essay/data/nankyoku/43penguin5/
URL(右):URLが存在しないかつ、元のアカウントが不明。流行当時の記憶があり、かつその時一番面白いと思ったコラージュをネットの海で偶然発見したものの、数日後にURLが消えてしまいました。このまま消滅してしまうのはもったいないのでここで紹介したいと思います。

薬物依存の悪循環 キーワード:「薬物依存の悪循環」「○○の悪循環」 流行期間:2014年1月~2014年6月ごろ

薬物依存の悪循環
本来は薬物の危険性を警告するものだが、薬物の代わりに様々なものを代入し、ポスターの男性を「○○依存」にさせるコラージュ。ほかには「課金」「アイドル」「博士課程」などがある。自分が好きな物を代入し、布教や宣伝に使われる場合も多かった。


引用元

元ネタは2010年ごろに宮城県公式ホームページに投稿された、薬物依存に対する注意喚起を促すポスター。
元URLは現在無効

「恋人といる時の雪って特別な気分に浸れて僕は好きです」 キーワード:題材そのまま
流行期間:2014年頭~その後、数年間雪が降るたび

恋人といる時の雪って特別な気分に浸れて僕は好きです

 

はじめは惚気が話題となり拡散された画像。その後、次々とアニメやゲームのキャラクターをトレースした画像が投稿された。ただトレースするだけではなく、セリフや状況、登場人物の人数を変えたアレンジを加えたものが多かった。以降、雪が降るたびにネット上で見かける画像となった。

引用元
元ネタは、関東で大雪となった2013年1月14日の街頭インタビュー。

海外で流行った“テンプレ画像”

ここからは海外で流行った“テンプレ画像”を紹介します。“テンプレ画像”そのものというよりもその型を利用したネタ画像といった方が近いかもしれません。

「『青と黒』と『白と金色』どっちにみえる?」 キーワード:「青黒」「白金色」「ドレス」流行期間:2015年頭

 

『青と黒』と『白と金色』どっちにみえる?

 

背景とドレスの色合いを脳がどう認知するかにより、人によって見え方が異なるドレスの画像。ただそれだけなのだが、「どうしても黒と青/白と金にしか見えない」「どんなメカニズムなんだ」と上を下への大騒ぎとなった。この画像以外にも、“どちらかにしか見えないネタ画像系“やドレスに関する投稿が増加した。

引用元
元ネタは2015年ごろに海外で話題となったドレスの画像。

URL:https://twitter.com/romanticaugogo/status/571134180026773504 (こちらは日本に上陸した際のツイッターの様子。)

「キリンの蝶ネクタイ」 キーワード:「キリン」「蝶ネクタイ」「giraffe wear a bow tie」流行期間:2020年9月以降

 

キリンの蝶ネクタイ1

 

もしキリンが蝶ネクタイをつけるとしたら、どちらの位置が正しいかを問う画像。「どちらの方がバランスがいいか」という議論から、「カジュアルとフォーマルで使い分けるべき」「私はこっちの方が可愛いと思う」というコメントと共に、リボンの位置をやサイズを変えたコラージュが投稿されたり、リボンをつけたキリンのキャラクターのアニメ画像が「参考資料」として投稿されるなど、広がりを見せている。

引用元
元ネタは2020年9月にTwitterに投稿された画像。
URL:https://twitter.com/SortaBad/status/1305654679414566914

 

“テンプレ画像”の条件

ここからはネタ画像が拡散力の高い“テンプレ画像”になるための条件を考えていきます。

①思考を奪って一考の余地を与える ―2択を迫るダブルバインド効果―

ダブルバインドとは、心理学やマーケティングで使われる用語です。心理学で使われる場合は、矛盾する二つの条件を相手に提示しすることで、相手を混乱させ強いストレスを与えることを指します。

例えば、上司が「自由な発想を大事にする」と言っているのに、部下が提案した企画書に理不尽な文句ばかりつけてきたり、親が「あなたが一番大事」と言っているのに、他人の前では貶したりすることです。
そうすることで、「どっちが本当なの?」という混乱とストレスを生じさせ、相手に行動を起こしにくくさせます。親子関係でダブルバインドの状態が長い間続くと、子どもは精神疾患を発症しやすくなるといわれています。

マーケティングでは「相手の思考や行動を束縛・誘導する」というダブルバインドの効果を応用し、あらかじめ不都合な選択肢を省いた2択を消費者に提示することを指します。
例えば、時計を売る時に「金の時計と銀の時計、あなたはどちらを選ぶか?」というような具合です。ここでは時計を購入することを前提として、2択を提示することで「購入するか否か」という判断・思考を消費者の意識から遠ざけています。

もちろん、“テンプレ画像”もこの理論を応用しています。

キリンの蝶ネクタイ2

 

この画像では「キリンの首の上の方に蝶ネクタイをつけるか?」「キリンの首の上の方に蝶ネクタイをつけるか?」の2択を提示しています。省かれている選択肢は「キリンは蝶ネクタイを着けない」です。
このように、キリンが蝶ネクタイを着けないという前提を除外した選択肢を提示することで、画像を見た人は「上につけるか?下につけるか?」に思考を集中させ、スムーズにキリンの蝶ネクタイ議論に没入することができるのです。

―単純な正解が2つあることでダブルバインドから逸脱する快感を得られるー

2択に絞ることで、好ましくない選択肢を排除し、「おっと、キリンは蝶ネクタイをつけたりしないのでは?」という理性に阻まれることなく、どちらか一択を選ばせることに成功しました。
とはいえ、これではあまりにつまらない。そう考える人が出てきます。提示された2択に収まらず、蝶ネクタイをキリンの頭につけてあげたり、たくさんの蝶ネクタイをキリンの首に連ねるコラージュを作成するのが、そんな想像力旺盛な人たちです。

望ましくない選択肢を省いた2択を提示してはいますが、キリンが蝶ネクタイを着けないのは当たり前です。あえて緩やかな“やさしいダブルバインド”を敷くことで、一部の人たちに2択以外の抜け道があることに気づかせ、「製作者を出し抜いてやろう」「こうやったら面白いだろう」という想像力や野心を刺激しているのです。

今回はパート①「思考を奪って一考の余地を与える」でした。なぜ人はこんなにも“テンプレ画像”にのめり込んでしまうのかを中心にお話ししていきましたが、次回は引き続き“テンプレ画像”を題材に、おしゃべりと議論が大好きな人たちについて分析していきたいと思います。パート②「みんなフランクな殴り合いが好き」でお会いしましょう!