SNS発のキャラクター、『ちいかわ』が大きな流行を生んでいます。
『ちいかわ』はイラストレーターの「ナガノ」さんがツイッターに投稿する人気漫画で、Twitterのフォロワー数は205万人を突破しており、関連するキャラクターグッズも多数販売されヒットを飛ばしています。
『日本キャラクター大賞2022』のグランプリ獲得や、月刊情報誌『日経トレンディ』の「2022年ヒット商品ベスト30」で1位『ヤクルト1000』に次ぐ2位選出が記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
なぜ、このような大ヒットが生み出されたのでしょうか?
『ちいかわ』は、基本的にはちいかわとその仲間たちがほのぼのとした日常生活を送る内容が主となっています。
しかし、その一方でちいかわたちが突如現れる敵の“討伐”をおこなう等し、人間と同じように報酬を得て暮らしているという過酷さが描かれているのも特徴です。
「見た目のかわいさに反した“シビアな世界観”」をヒットの要因として説明する記事もインターネット上に散見されます。しかし、本当にそれだけなのでしょうか。背景にある人間の欲求にはどのようなものがあるのか──インサイトの観点から紐解いてみましょう。
励まされるより、励ましたい?
今回『ちいかわ』のヒットについて考える上でヒントになりそうなn=1行動の事象を、私たち株式会社デコムの運営しているサービス「TrendbanK」から見つけることが出来ました。
「TrendbanK」では、デコムのインサイトアナリストが厳選した、「新路線」や「新しいアイデア」につながる価値を含んだn=1行動を大量に読むことが出来ます。
それでは、下の画像をご覧ください。
デコムの調査によってn=1の事象として出現した、実際の生活者の方の行動になります。
こちらの男性の方は自営業を営まれており、決して裕福な生活を送ってはいません。未婚で49歳ということもあり、寂しさや将来への不安を感じる機会が多いのではないかと推察することが出来ます。そんな日々を過ごす中で、ネットショッピングで「二番目に安い値段で販売をしている店」を探しては商品を購入しているそうです。「世の中で強い立場にある人を応援する気になれない」という発言があることからも、この方が「弱い立場のものを応援する」という気持ちで「二番目に安い値段の店」を利用していることがうかがえます。
この事象から見えてくるのは、「弱い立場にいるものに自分を重ね合わせて応援をすることで、励まされたような気持ちになりたい」という欲求です。
考えてみれば、現代を生きる我々は「誰かを励ます」ことに「自分が励まされる」こと以上の価値を感じているのかもしれません。推し活は今や一般的なワードになっており、クラウドファンディングも登場時と比べると飛躍的に世間に浸透しています。
我々の心の内に知らず知らずのうちに溜まっていった、「自分が励まされても、今より良い生活を具体的にイメージできずかえって人生の行き詰まりを感じてしまう」「毎日を生きるだけで精一杯なのに、これ以上自分が何かを目指して頑張るなんてくたびれてしまう」といった疲弊感。そんな不満を解消するために、先の49歳男性の方のようなインサイトが生まれたのではないか──大局的なトレンドと照らし合わせることで、そのような考察を試みることも出来そうです。
「応援」したくなる「癒し」キャラクター
さて、『ちいかわ』に話を戻しましょう。
先ほど洞察したインサイトを、『ちいかわ』は十分に満たしているようです。「見た目のかわいさに反した“シビアな世界観”」の中で強調されるのは、「日々の生活を過ごすということは必ずしも上手く行くことばかりではないよな」と感じさせるような、我々にとっても「あるある」な描写の数々です。
ちいかわたちは我々の生きる世界と同じように、「草むしり」や「怪物の討伐」といった「仕事」に従事しています。その中で試験に落ちたり、仲間の足を引っ張ってしまったり、些細なことに躓いて落ち込むシーンが多く描かれています。その度に「イヤッ」「ヤダ―ッ」と駄々をこね、しょげてしまいながら、仲間から励まされることでなんとか頑張ろうと奮闘するちいかわの姿を見て、我々は「でもこれってわかる」と頷き、思わず「がんばってー!」と応援したくなってしまうのです。
ここに、『ちいかわ』の捉えたインサイトがあるのではないでしょうか。
最後に、『ちいかわ』以外のSNS発のキャラクターをご紹介させていただこうと思います。作者は異なりますが、『おぱんちゅうさぎ』という新興のキャラクターが近年人気を集めています。イラストレーターの「可哀想に!」さんがSNSに投稿したこのキャラクターは見る見るうちに人気を集め、現在のTwitterのフォロワー数は57万人を突破しています。更に3月10日からは、東京の池袋PARCOにて『おぱんちゅうさぎ展』がスタートし、初日には前売り券が完売したことで大きな注目を集めました。公式サイトによると、『おぱんちゅうさぎ』のコンセプトは次のように書かれています。
おぱんちゅうさぎは地球に住むイキモノ。なかなか恵まれない。
今にも泣きそうだが、ひたむきに健気に生きていく。
ここには、『ちいかわ』とも通底する「応援したい」インサイトを捉えたメッセージがあるのではないでしょうか。
なお、「TrendbanK」につきましては、2週間の無料トライアルで全ての内容を閲覧することができます。少しでもご興味を持たれた方は、是非下記のフォームより「TrendbanK」をお試しください!
◆公式SNS
ちいかわ(Instagram)
https://www.instagram.com/ngnchiikawa/
おぱんちゅうさぎ(Twitter)
https://twitter.com/opanchu_usagi_
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