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なぜ若者たちはサウナに行くようになったのか

コロナ禍で混乱している状況下においては、かなり危険なお話になってしまいますが、ある種オジサンの代名詞のひとつだった「サウナ」が、近年若年層の間で復権しつつあったのをご存知でしょうか?

もとをただすと、2011年に出版されたマンガ家のタナカカツキさんによる「サ道」というマンガ+エッセーが始まりだったようです。そして、2018年にWeb業界のサウナ好き有志4名によって立ち上げられた、サウナ界の食べログ的な「サウナイキタイ」が驚くようなペースで拡大し、今の流行の象徴のような存在となります。

この流行、あるいは復権の背景にはただの一時的なものではない背景がありそうです。今回は「サウナに行く若者たち」について、インサイトを基点に考えてみたいと思います。

もちろん、「だからこんな時期だけど、サウナに行きましょう」というお話にはなりません。念のため。

欲しいのは単なるリラックスではなく緊張感のその先

私たち株式会社デコムの運営しているサービス「Trend banK」から、「サウナに行く若者たち」について考える上でヒントになりそうな事象を幾つか見つけました。

16歳のおそらく高校生ですが、「緊張感」に打ち勝つことに満足を感じています。そして、そうした緊張に強い人間に対する畏敬の念すら抱いています。

もちろん、普段からやっているゲームにも、簡単にはリセットできない不可逆な設定がなされており、そこには一定の緊張感が、ある種の魅力になっているということはうかがえます。

こちらも18歳の若い女性の事象ですが、日記帳にあえて手書きでまとめ、絵や写真など実物でまとめることで、ちょっとした「整う」気持ちを味わっています。デジタルではなくアナログという間違えたりすると面倒な不可逆的な「緊張感」を伴う作業で、次に進むための力を得ています。

これらの事象から見えてくるのは、次に進むために心を整理するための、ある種の面倒を伴う「緊張感」への欲求ではないかと考えます。

ただリラックスが欲しいならサウナである必要はない

もとはサウナの話でしたが、「緊張感」というずいぶん遠い話にいるのではないかと思われますが、実はそうではありません。

冒頭にも記しましたが、サウナというとオジサンの代名詞にもなっている時期がありました。そして、サウナ、あるいはスーパー銭湯というと、彼らがリラックスするための施設というのが一般的な印象でしょう。

ただ、若者が行きそうなリラックスするための施設なんて、いくらでもあります。カフェに行くのもよし、漫画喫茶に行くのもよし、ただ家にいるのがもしかしたら一番リラックスできるかもしれません。なのに、なぜ、彼らは灼熱のサウナで苦しい思いをし、そのあとしびれるような水風呂に入るという行動に向かうのか。

それは、先ほど例に出した事象のように、ただのリラックスでは、自分を整理したり、達成感を感じたりすることができず、それでは次の行動に気持ちよく進めないことを、若者たちはよく知っているからではないでしょうか。

このマイクロトレンドでも、一見ただの女性がヨガして自分をリラックスしているだけの行動のように思えますが、「母からの解放」あるいは「自分と向き合う」などのややもすれば「緊張感」のある行動によって、自分を整えている姿がみてとれます。

実は、冒頭で例に挙げた「サ道」にも頻発するのが「ととのう」という言葉。ここでも「ととのう」は単純に「ぼーっと」するようなリラックスとは異なり、逆に頭がはっきり、すっきりしてくることに価値を置く意味で使われています。

「サウナイキタイ」を発案したおひとりの方も、とあるインタビューで「リラックス」という言葉をつかいながらも、サウナと水風呂を繰り返していると、普段考えている細々としたことが一旦吹っ飛んで、もっと大きな視点でモノを考えられるということを語っています。

たしかに、サウナの暑さと水風呂の冷たさは、まあまあ論理的、物理的に考えても、リラックスとは程遠いのではないかというよう実感もあります。

つまり、若者たちがサウナに行くのは単純なリラックスを求めてではない。暑さと冷たさという刺激を直接体験することによって得た「緊張感」により自分が「整う」ことで、次に進むモチベーションをもつことができる、ということになるかと思われます。

若者だけでなく、老若男女が一致団結して難局を乗り越えねばならない時代で、サウナは銭湯よりも困難な経営を強いられているのかもしれません。簡単なことは言えませんが、アフターコロナには再びみんなが愛するサウナが盛況になっていることを祈るばかりです。


いかがでしたでしょうか。
2020年に、一人の顧客/生活者・n=1 を深く掘り下げる視点で分析した記事でしたが、このように、デコムが保有する「n=1定性データベース(1万件以上)」からも、次のトレンドの兆しとなる、人々の欲求を捉えることが可能です。

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