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若い農業従事者が増えていている理由をインサイト観点で説明する

若い農業従事者が増えていている、という報道が相次いでいます。その理由は、組織に雇われながら農業が出来る“農業経営法人”がヒットしたからだ、と言われています。

 

これまでの行政は“農業は儲からない。だからやりたくない”という声に着目して、“だったら、補助金をつけましょう”という施策を行ってきました。しかし、思うような成果を上がられず、農業従事者は減る一方でした。

 

それなのに、”農業経営法人”が登場したことで、大きな変化が起きようとしています。

 

ヒットの背景には「カテゴリー全体に足りないものの発見」があったとデコムでは洞察しています。「カテゴリー全体に足りない」とは、消費者がそのカテゴリー(市場そのもの)に求めているけど十分に充たされていない想いを指します。デコムでは、その想いを一言で「未充足な欲求」と表現しています。

 

消費者の行動や価値観の変化にブランドが対応できないとギャップが生まれ、“未充足な欲求”が生まれるようになります。「この業界、なんか最近、微妙だよな~」という声がユーザーから漏れてくれば、危険信号が点滅していると言えるでしょう。

 

時代の変化に合わせて、ギャップを上手に埋めていかなければ、カテゴリー(市場そのもの)は衰退してしまうのです。逆にギャップを上手に埋めたからこそ農業従事に就く若者が増えたとデコムでは考えています。

農業経営法人が埋めたギャップ(未充足の欲求)とは?

農業経営法人の事例を、もう少し詳細に見て行きましょう。

農業経営法人は、これまでの「家業としての農業」と大きく違って、週休2日・8時間労働のサラリーマンのように、農業を「職業」にできるのが最大の特徴です。

 

つまり、農業経営法人が埋めたギャップ、それは「農業しながら、プライベートも充実しているワークライフバランスな生活を送りたい」という十分に充たされていない想いだったのではないでしょうか。

 

この背景には、次のような若者の行動や価値観の変化がありました。

 

・仕事もプライベートもメリハリがあってこそ、生活に充実感が得られる

(でも農業は『家業』だから、生活全ての時間を捧げなければならないからやりたくない)

 

・平日は都市で働き、週末は田舎で農業を楽しむ

(地方移住からデュアルライフ(二拠点生活者)の出現)

 

この変化から生まれたギャップ(未充足の欲求)を、農業経営法人は埋めることに成功したのです。時代の変化に合わせて現れたカテゴリーの弱みを打ち消した好例です。

 

ギャップ(未充足の欲求)を発見する2つの視点

ターゲットの方に「このカテゴリーに足りないものは?」「どんな点が物足りないですか?」と尋ねてみても、本心では「え?特に興味ないです・・」という気持ちです。

 

その口から発言される多くは、表面的で核心を捉えたものではありません。

 

では、どうすれば良いのでしょうか?

 

ひとつは、自社の商品カテゴリーばかりを見るのではなく、その周辺の生活領域まで視野を広げることです。

 

農業経営法人の例で考えると、若者の「仕事・働き方」という生活領域で起きている価値観の変化を捉えています。市場の中ばかり見ていると気付けない変化に気付けたからこそ「農業経営法人」という仕組みが生まれたとデコムでは考えています。

 

もうひとつは、新しい価値の萌芽を示すような、新奇性のあるターゲットの行動に着目することです。農業経営法人の例では、週末だけ地方で生活するデュアルライフ(二拠点生活者)という新奇性のある行動に着目したのではないでしょうか。

 

まとめると、

 

1)当該ブランドの周辺の生活領域で起きているトレンドに着目し、そこで求められる価値から自社ブランドに足りないものを導き出す

 

2)n=1で良いので、新奇性のある消費者行動に着目し、そこで求められる価値から自社ブランドに足りないものを導き出す

 

デコムでは、上記1)2)から効率的にギャップ(未充足の欲求)を発見する独自の手法を確立しており、多くの実績があります。