INSIGHT LAB

なぜ「共感」が求められているのか?

上司から降りて来る方針が抽象的過ぎて、具体的なマーケティングアクションに落とすのが難しいんだけど、これってどうしたら良いと思います? そんな声を私たちデコムはクライアントからよく聞きます。

・サステイナブルなブランドにせよ
・こころとからだの健康を提供せよ
・人と人とのつながりを生み出すブランドにせよ

言っていることは「その通り!」なんだけど、いざ実行に移すことを考えると何をすれば良いか分からない。そういう時は「何をするか?」について考えるのではなく、「なぜ抽象的な方針ばかり示されるのか?」から考えると良いでしょう。

ESG経営、CSV経営、SDGs、ソーシャルグッドなど単に“儲かる”だけではく、事業活動が“社会的な課題の解決にも貢献する”という色彩が求められているのが昨今です。社会全体に共通する課題に寄り添うわけですから、おのずと抽象度も上がり、とても概念的になります。

①ブランドビジョンやブランドパーパスという「形」に仕立てて、ブランドが世の中に提供する価値、社会的な
存在意義を定義する。

②その実現のために、ブランドのすべてのマーケティング活動を行う。

③世の中に提供する価値、社会的な存在意義が多くの人々から求められている以上、合致すればブランドの業績は伸ばせる。

この三段論法が理屈ではありますが、現実はそんなに甘くはありません。

人は理屈では動かない、人は共感して動く

今どきの消費者にとって価値があり、自社ブランドやカテゴリーに期待される「サスティナビリティ」「こころとからだの健康」「人と人とのつながり」とは具体的には何か。

消費者から「そんなこと、このカテゴリーやブランドに期待してないし、全然共感できない」と思われるようなことをしても売上は伸ばせません。

大きな方向性は良くても、共感されなければ打ち手はスベる、ということです。理屈としては納得できる戦略でも、消費者の共感を呼ばなければ意味がありません。

具体例をあげて説明します。

役員に占める女性割合が高いなど女性が活躍する会社に投資するファンド「SHE」という株式ファンドをご存知でしょうか。経営者やリーダーに十分な数の女性がいる企業の方が業績は良く、長期的な価値を創造できるというコンセプトに基づいて、組成されています。つまり「女性たちを重視する企業を支援すること」が、SHEの社会的な存在意義です。

このことを、どのように投資家たちに伝えれば、共感を持って受け止められるでしょうか。例えば、TV-CMや新聞広告で「女性応援宣言」を発信すれば良いのでしょうか。

ファンド「SHE」が採った施策はPRでして。

2007年のカンヌライオンズでも話題になった「Fearless Girl(恐れを知らぬ少女)」をご存知でしょうか。国際女性デーの前日に、ウォール街のシンボルである雄牛像(チャージング・ブル)の前に対峙するような形で少女の銅像が設置されました。腰に手を当てたポーズを真似して、少女の隣で写真を撮る人が続出し、ニュースなどでも取り上げられ、多大なPR効果を生み出しました。

結果、ファンド「SHE」に集まったお金はこれまでの3倍以上に増加したそうです。

ビジョンはインサイトで共感に変わる

なぜ、ここまで多くの人々の共感を呼んだのでしょうか。それは、このFearless Girl(恐れを知らぬ少女)がインサイトを捉えていたからです。

これは私たちデコムの推測ですが、

・恐れずにまっすぐな気持ちで戦う姿を見ると清々する、清々しい気分になる
・理不尽な現状にあっても、まっすぐな心で立ち向かうことは素晴らしい

というインサイトを捉えでいたのではないでしょうか。だからこそ人々の共感を呼んだのだと思います。

では、このように社会課題とブランドを結びつける接点となるようなインサイトを見つけるには、どうしたら良いでしょうか。

私たちデコムは、抽象的なビジョンをテーマに人間を見に行くことを推奨しています。それこそ、「こころとからだの健康を実践している人」「人と人とのつながりを生み出している人」はどんな人かを調査します。彼らが行なっているお気に入りの行動を調査し、そこにどんな価値を感じているのか、明らかにするのです。

そこから、周囲が共感するインサイトは見出せます。

デコムでは、抽象的なビジョンを出発点に、消費者のインサイトを明らかにする独自の手法を確立しており、多くの実績があります。