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ブランドに足りないものを見つけた吉野家「超特盛」

牛丼の新サイズ「超特盛」が想定以上にヒットした吉野家が、赤字から黒字へと転換しました。

コメの量が大盛・特盛と同じで、肉の量が大盛の2倍。並盛380円より400円高い780円ですが、発売後1カ月で100万食を達成したそうです。大ヒット商品と言えるでしょう。

ヒットの背景には「ブランドに足りないものの発見」があったとデコムでは推察しています。「ブランドに足りない」とは、消費者が求めているけど十分に充たされていない想いを指します。デコムでは、その想いを一言で「未充足な欲求」と表現しています。

消費者の行動や価値観の変化にブランドが対応できないとギャップが生まれ、“未充足な欲求”が生まれるようになります。「このブランド、なんか最近、足りないんだよな~」という声がユーザーから漏れてくれば、危険信号が点滅していると言えるでしょう。

時代の変化に合わせて、ギャップを上手に埋めていかなければ、ブランドの業績は衰退してしまうのです。逆にギャップを上手に埋めたからこそ吉野家は大ヒット商品を開発できたとデコムでは考えています。

超特盛が埋めたギャップ(未充足の欲求)とは?

吉野家の事例を、もう少し詳細に見て行きましょう。

超特盛が埋めたギャップ、それは「コメはホドホド、具材をもっとガッツリ食べたい」という十分に充たされていない想いだったのではないでしょうか。

この背景には、次のような消費者の行動や価値観の変化がありました。

・炭水化物は少な目、タンパク質と野菜でお腹を満たすと健康に良いという価値観の増加
・具材をつまんだ後、コメも含むどんぶりでシメる、ちょい呑み客の出現

前者はライザップを起点とする「低糖質ダイエット」がすっかり定着したことに起因します。後者は「居酒屋離れ」を起点とする「せんべろ現象」を採り入れたファストフードの台頭に起因します。

この変化から生まれたギャップ(未充足の欲求)を、強みである主力商品の牛丼のサイズ変更で埋めることに成功したわけです。自社ブランドの強みを活かしつつ、時代の変化に対応した好例です。

ギャップ(未充足の欲求)を発見する2つの視点

ユーザーに「このブランドに足りないものは?」「どんな点が物足りないですか?」と尋ねてみても、本心は「だいたい良いんじゃないですか?」と考えています。

その口から発言される多くは、表面的で核心を捉えたものではありません。

では、どうすれば良いのでしょうか?

ひとつは、自社ブランドばかりを見るのではなく、その周辺の生活領域まで視野を広げることです。

超特盛の例で考えると、消費者の「食・健康」という生活領域で起きている価値観の変化を捉えています。競合比較に終始していると気付けない変化に気付けたからこそ「超特盛」が生まれたとデコムでは考えています。

もうひとつは、新しい価値の萌芽を示すような、新奇性のある消費者行動に着目することです。超特盛の例では、最初は牛肉を食べてお酒を飲み、最後は炭水化物で〆るようなちょい呑み客の新奇性のある行動に着目したのではないでしょうか。

まとめると、

1)当該ブランドの周辺の生活領域で起きているトレンドに着目し、そこで求められる価値から自社ブランドに足りないものを導き出す

2)n=1で良いので、新奇性のある消費者行動に着目し、そこで求められる価値から自社ブランドに足りないものを導き出す

デコムでは、上記1)2)から効率的にギャップ(未充足の欲求)を発見する独自の手法を確立しており、多くの実績があります。