商品を買って貰う機会を増やすために、「CRM」的な要素を盛り込む施策は効果が良いでしょうか?
そうかもしれませんが、あまりに企業目線ではないかとも思います。何を買うかは消費者にのみ決める権利があり、どれだけ接触しようと、腐った鯛では絶対に売れません。
したがって、消費者が何を買うかをどうやって決めるかを知った上で、戦略を練るべきでしょう。消費者が「意思決定」を下す背景の説明について、確率思考の戦略論では、以下のような説明がされています。
ポアソン分布は、世の中に発生する多くの事象に当てはまる重要な確率分布です。ポアソン分布は、平均発生率が長期的に見た場合一定であるある事象の「ある一定期間(単位期間)の分布」を表します。
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我々は、日々いろいろな選択・決断をしています。そのうち自分たちの決めたことがどのような結果になるかわからないで選び、かつその選択が次の選択に影響しない選択について考えてみましょう(独立にランダムに起こる事象のことです)。これはちょうど、袋から1秒ごとに玉を取り出すのとそっくりです。袋には、取り出すと何かが起こる非常に少ない赤玉と、選んでも何も起こらない大変多くの白玉が入っています。事故に遭う確率は、袋の中から赤玉を取り出すようなものです。何も起こらないのは、白玉を選んでいるのと同じです。
(略)
洗剤やシャンプーの購入を個人レベルで診てみると、消費者個人の購買活動は同じようにポアソン分布しています。それぞれ個人がある一定の確率を持ち、ランダムに赤玉と白玉の抽出のごとく確率試行をし、そしてそれぞれは独立して起こるのです。
「プロイセン陸軍で馬に蹴られて死亡した兵士数」の分布は母数 0.61 のポアソン分布に従う事例として知られています。稀に独立してランダムに起こるイベントの分布を理解するのにピッタリです。
身近なポアソン分布の事例
ポアソン分布に近しいデータを探してみたところ、筆者の「1ヶ月で”いきなりステーキ”に行く回数」が、かなり近いとわかりました。ちなみに、これまで2016年6月から約3年かけて58.4kg食べてきました。
「いきなりステーキ」アプリでは、肉マイレージを貯めていると、これまでの利用履歴を確認できます。2016年6月から2019年5月までの36ヶ月分のデータを元に「月に何回通っているか?」を計算してみました。
4回/月がもっとも多く、36回中6回、10回/月も行っていた月が36回中1回あったようです。平均すると月5.13回通っていたと分かります。
この結果から、以下のようなポアソン分布になると分かります。
実際と理論値を比較すると、けっこう近似していると分かります。大きく外しているのは、5回/月の回数でしょうか。
筆者は、自分の意志で「いきなりステーキ」に行っているのに、長期的に見てみれば一定の確率試行に基づいて行動していたと分かります。
ある月で、週1回(月4回)行く確率は17.04%だし、月5回以上行く確率は58.34%だと分かります。半分以上の確率です。
つまり、消費者の行動を変えたければ、袋の中の赤玉をできるだけ増やす、赤玉が当たる確率があがるようにするだけなのです。
CRMが良い悪いという話ではありません。赤玉を増やす、確率を高める、そのような施策も必要だよね、と思います。