INSIGHT LAB

BL系ドラマが多くの視聴者を集める理由

4月といえば、以前は新ドラマの季節でした(若干の無理矢理感…)が、最近ではあまり話題にも上らなくなってきました。外出がはばかられるご時世とはいえ、急にみんながテレビを見始める時代ではないかもしれませんが。

そんな苦境にあるテレビドラマの中でも数々のヒットを飛ばし、定着しつつあるのが、いわゆるBL系のドラマ。「おっさんずラブ」は映画化に続きシーズン2も放映され、「きのう何食べた?」も続編スペシャルが放映され、映画化も決まりました。

マンガ・アニメ・小説から、テレビドラマや映画にメディアを移したことで、一定の領域(腐女子?)での嗜好性を離れ、BLはもはや社会的地位を確立したといえるでしょう。

今回は、なぜBLがここまで一般性を獲得し、人気コンテンツになっているのかについて、インサイトの観点から考えてみたいと思います。

老若男女を問わずに芽生えてくる「純粋さ」への欲求

私たち株式会社デコムの運営しているサービス「Trend banK」に、「BLドラマがヒットする」理由を考える上でヒントになりそうな事象を幾つか発見しました。

 

TrendbanK事例_和服姿の女性

 

65歳の男性が大学生の伊豆旅行を思い返しながら、目の前の奥様と当時探した「伊豆の踊子」とを重ね合わせるロマンチックな事象です。同性愛とは関係のない恋愛事象ですが、この方は、中学生や大学生の頃の自分の純粋な気持ちを今も失わずにいたい、という思いがあるようです。

 

TrendbanK事例_談笑しながらストレッチ

 

こちらは、恋愛とは全く関係のない事象ですが、決まり事や制約から解放されることで、純粋にスポーツそのものを楽しむことに価値を感じています。「ゆるさ」は制限があるからこその価値ではありますが、何にもとらわれない自由さは、生身の自分に向き合うきっかけになるのではないかと思われます。

これらの事象から見えてくるのは、凝り固まってしまった自分の考え方や、人から押しつけられたしがらみから解き放たれ、ゆったり、あるいはほのぼのとした純粋な気持ちを取り戻すことへの欲求ではないかと考えます。

「純粋さ」の表現の一手段としてのBLドラマ

「おっさんずラブ」や「きのう何食べた?」の主たる登場人物たちは、ご存知の通り男性の同性愛者であり、描かれるのは彼らの恋愛模様や生活風景です。当然のことながら「同性愛者」としての特殊さを延々と描いているわけではありません。

もちろん、同性愛者ならではの悩みや葛藤などは出てきますが、それは重くない形で、生きていれば誰しもが経験するような悩みとしてでてくるだけで、むしろ彼らが人を愛したり、豊かな生活を送ったりすることに、いかに「純粋」であるかということを描いています。しかもそれらは、何かほのぼの、ゆったりした時間の中で描かれています。

そのほのぼの、ゆったり感は、先ほど例に上げた事象にもあるように、なんとなくリアルな世界から離れた感覚、凝り固まった考え方やしがらみから抜け出していることに起因しているといえるでしょう。

つまるところ、「同性愛」だけではメインテーマにはなり得ない。そこにはすでに「面白み」はありません。そこには、世の中の流れとして、ダイバーシティやLGBTQIA+という考え方に対する受容度の高まりが影響しているといえるでしょう。

 

MegaTrend_同性婚の合法化に賛成は78.4%

では、同性愛がここまで社会の中で受容され、当たり前になっている中で、いわゆるBL系ドラマが大きな反響を呼び、ヒットするのはなぜなのか。

それは同性愛者という前提を抜きにした、生身の人間が「純粋」に生きている姿を、殺伐とした世の中から離れて、ほのぼの、ゆったりと描いているからといえるのではないでしょうか。

逆に、たとえ男女の性愛を描くストーリーであったとしても、こうした「純粋」さを描けていれば、多くの共感を呼びうるということになります。ただ、こちらは何かリアリティから離れられず、殺伐としてしまうということもいえます。

先ほどの事象からも、若者だけではなくより幅広い今の人々がドラマやストーリーに共感する一つのスイッチとして、ある種のゆるさや自由さを与えられたときに感じられる、ほのぼのとした「純粋」さ、というのがあるのかもしれません。

ドラマを制作する方々も、その「純粋」さに共感する今の人々の心情に目を向けたと考えられます。そして、その「純粋」さに若干のゆるさを交えて描きやすかったのが、同性愛の方々だったということになるのではないでしょうか。

Trend banKについて
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