「ヒルナンデス!」が秘かな人気。その理由をインサイトから探る | 株式会社デコム
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「ヒルナンデス!」が秘かな人気。その理由をインサイトから探る

テレビのワイドショー、報道番組では、連日コロナ関連のニュースばかり。今一番、国民が(いや人類が…)知りたい情報なのですから、当然と言えば当然です。

しかし、そんなご時世でありながら、お昼の情報番組「ヒルナンデス!」が秘かな人気(もともと人気番組ですが…)になっているようです。この時間の裏番組は、人気タレントをMCにしたワイドショー番組がほとんどですが、その間隙を突いて、「ヒルナンデス!」への好意、共感のSNSコメントが大量発生しているとのことです。

みんなが本当に知りたいのは、役に立つコロナの詳しい情報。しかし、共感を呼ぶのは「ヒルナンデス!」。これは少々興味深い事象といえるのではないかと考えます。インサイトの観点から少し探ってみましょう。

悲劇的状況に必要なのは、それをちょっと楽しめる余裕

私たち株式会社デコムの運営しているサービス「Trend banK」から、「ヒルナンデス!」への共感について考える上でヒントになりそうな事象を幾つか見つけました。

ヒルナンデス1

67歳の方が、節約は悲壮感ではなく楽しくやることが大事で、寄る年波にも余裕をもって対処するのが最も良い効果を生むと考えています。たしかに、悲しいときに悲しい気持ちになっても、その悲しさは募るばかりです。

一昨年亡くなった連続試合出場の記録を持つプロ野球の鉄人・衣笠祥雄選手は現役時、同僚がデッドボールを受け、表情をゆがめている時に、「顔は痛くねぇだろう」といって励ましたと言います。つまり、「痛い」と思えば痛いに決まっている、と言いたかったのでしょう。

ヒルナンデス2

これもまた60代後半の女性が、ペットを失った悲しみを乗り越えて、明るく楽しいことが未来に待ち受けていることを見据え、ロシア語の聖歌の練習に参加する事象です。ここでも、とかく深く考えてしまいがちな自分の性格を省みて、なんとかペットロスから脱しようという気持ちになっています。

これらの事象から見えてくるのは、深刻な問題に立ち向かう苦しい生活の中に必要なのは、悲壮感をもって生きていくことでも、深く考えすぎることでもなく、娯楽や楽しいことを考える「余裕」ということではないでしょうか。

本当にピンチの時には笑っていたい

コロナ禍の最中で本当に必要なのは、正確でかつ役に立つ情報かもしれません。少なくともテレビや新聞などの報道機関に求められるのは、そういったことを余すことなく伝える役割でしょう。

そして、困っている人々を本当の意味で救うことが出来ていなければ、時の政府を批判することも必要だといえます。実際にそうした流れに賛同する方面も大いに盛り上がっています。

しかし、そればかりでは受け取る側も疲弊してしまうのは当然のことでしょう。SNSを通じて寄せられる視聴者の声の中には「正論ばかりでうんざりする」「(MCのタレントの)怒った顔ばかりをみていると疲れる」といったものもあるようです。

逆に、イヤでも気持ちがへこむニュースばかりが耳に入って来るこんなときだからこそ、テレビでこそ癒されたいと思うのも当然の心理といえます。「ナンチャンの笑顔と出演者のやりとりにほのぼのする」といった声もあり、5月6日に放映された「阿佐ヶ谷姉妹の 見るとなぜか癒やされる2人旅」特集も好評だったといいます。

ヒルナンデス3

不吉な葬儀のトレンドを出すのも、このような時期に何ですが、悲し時だからこそ、ちょっとしたことで笑顔になりたい、させたいというのも人間の本質的な心理の中にあるのではないでしょうか。

その一方で楽しむ「余裕」を持ちたい、というばかりでなく、単純に「不快な情報」に触れたくないという心理も働いているのではないでしょうか。

さきほど衣笠選手の例にもあったように、人間の肉体と感情は一体だという考え方もあります。今回は災害ではなく「病い」が全て負の根っこにあるので、その対角線上にある「元気」に触れたいという思いもあるかもしれません。

人間は、悲しみ、怒り、恐怖など負の感情にさいなまれている時には、単純にその逆の喜び、笑い、安心を欲するのではなく、それらを欲する余裕をもった人間でありたいという感情が芽生えるのではないでしょうか。

「とにかく笑える大爆笑お笑い番組」がそれを実現しているのではなく、「ナンチャンの笑顔」、「阿佐ヶ谷姉妹の珍道中」などのコンテンツが共感を呼んでいるのが、非常に興味深くもあり、きっとこの程よい落ち着き加減が、このご時世にしっくりきているのかと思えます。

「ヒルナンデス!」が秘かな人気を獲得しているのは、単にワイドショーの狭間で隙を突くニッチな需要があるだけでなく、人間の本質的な心理を突いた結果だといえます。それが意図したものかどうかは別ですが、だからこそ多くの共感を呼んでいるといえるでしょう。