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withコロナでの広告コミュニケーションをインサイトの視点で考える

2月からのコロナ禍が生活や心理状態に多大な影響を及ぼす状況下では、個人にせよ、企業にせよ、あるいは国や政府にせよ、何らかのメッセージを発信するのは非常に難しいものです。

例えば、有名人が何かコロナ下での生活についての意見をSNSで発信するだけに、炎上騒ぎになるケースも数多く見受けられました。

思い起こされるのは、2011年の東日本大震災の雰囲気です。あのときもまさに自粛ムードで、多くの企業は「反感」を恐れた当たり障りのない広告やコミュニケーションを強いられていたように思われます。

今回は、コロナ禍の影響が多大な状況下での広告について、インサイトの視点で考えてみます。もちろん賛否両論ある広告表現もあるかと思いますが、ここでは、少なくとも炎上しなかった広告については、ある程度受け入れられたものと考えています。

「予測不能な未来を語る」ことへの嫌悪をどうやって回避したか

まず最初に取り上げたいのは、「ドラえもん『STAY HOME』プロジェクト」です。4/29、G.W.の開始とともに、まずは新聞広告にメッセージ広告が掲載されました。そのときのキャッチコピーが、

「だいじょうぶ。未来は元気だよ。」

というものです。
ドラえもん
     4月29日の朝日新聞朝刊に掲載された「ドラえもん『STAY HOME』プロジェクト」のメッセージ(C)Fpro

 

正直なところ、この言葉だけ単体で聞くと、「何をいってるんだ、こんな何もあてにならない状況で。。。」と若干引いた気持ちになる方も多いかと思います。

私たち株式会社デコムの運営しているサービス「Trend banK」にも、それに関連するような以下のようなn=1事象があります。

コロナ事象1

この57歳の女性はもちろん、「不衛生な洗濯物は手より足を使っていれるべきだ」という彼女なりの理屈はもっているものの、その裏にみえるのは、このような状況下で「意味のあること」や「誰も予測できない未来」ばかりに目を向けさせられることへの嫌悪感です。

そういう意味では、「誰にも予測できない未来」について語る先ほどの新聞広告のキャッチコピーは、もちろん賛同される方が多い反面、こういったイヤな現実や予測不能な未来から逃げ出したい、と思う人からの嫌悪も相当数集めるものかと思われます。

しかし、この広告がSNSで多くの共感を集めた理由は、ドラえもんという存在、ただ一点に尽きます。

絶対にわからない未来のことを、「誰もが未来から来たことを知っている」ドラえもんという存在に語らせたことが共感を呼んだ大きな理由だと考えられます。狡猾とも思えますが、「ドラえもん」にしか成し得ないことを見抜いていた制作者の勝利ともいえるでしょう。

ただし、ここで注意しなければならないのは、この「未来は元気だよ。」はドラえもんにしか言わせてはいけないメッセージだということです。他の誰かが言っても、先ほどの事象のような心理状態にある方々からは反感を買い、炎上する可能性が高いと考えられます。

「五感」で感じられなくった飢餓感を利用する

続いてご紹介したいのは、4/6に新聞の全国紙で掲載された「大井競馬70周年記念広告」です。こちらのキャッチコピーは、

「世界がいつかまた、騒がしくありますように。」

というものでした。

大井競馬広告
                                                                                大井競馬の新聞広告

70周年記念というタイミングでの広告掲載は、相当前から決まっていたと考えられますが、4/6というと緊急事態宣言が出る前日のことです。この時点で、こういったメッセージを発すること自体かなり勇気のいることですし、しかも不要不急なレジャーや娯楽、その中でも眉をひそめられがちなギャンブル関連の広告です。

ただ、この広告に多くの反感が集まった、ということはなかったようです(不確かな情報ですが…)。その理由について、再びn=1から考えてみます。

コロナ事象2

定期的に行っていたケーキバイキングに行けなくなってしまった鬱憤を晴らすために、自宅でケーキをホールで作り疑似体験する33歳の主婦の方の行動です。この裏にある心理は、ケーキバイキングに行って、居並ぶケーキたちを前に対峙するという「五感」で感じる行動への飢餓感かと推察されます。

もちろん、その代わりとして家でケーキを作って、好きなだけ食べることで充たされることはあるかもしれませんが、この方が求めているのは、ケーキが所狭しと並んでいるリアルな環境を「五感」で感じることだと考えられます。

ここで、先ほどの広告に戻ると、「世界がいつかまた、騒がしくありますように。」のバックのビジュアルは、お客さんが一人もいない競馬場の観覧席の画です。このあえて「観覧」「ライブ」「騒がしさ」といったあたりをキャッチにしたことが、競馬ファンならずとも心を打つ広告になっている理由だと考えられます。

コロナの影響で、イベント、スポーツのほとんどが中止となり、多くの方々がライブ感や人が集まって騒がしくすることに飢えている状況でした(今もそれは続いていると思われます)。その心理をうまくとらえたキャッチコピーとビジュアルだったと考えられます。

一つ目は普通なら反感を買いそうな言葉を、「代えの利かない絶対無二の存在」に言わせる、二つ目は不要不急なレジャーを、人々が最も飢えているであろう欲求に結びつける、それぞれのやり方でこの難しい状況で多くの共感を呼んだ広告の事例と言えるのではないでしょうか。

参考記事:緊急調査で明らかになった、With/Afterコロナの消費者の20の新・欲求とは?無料レポート/セミナーあり