実践型インサイト人材育成プログラム『インサイトフル』導入企業様インタビュー 日産自動車株式会社様
当記事では、弊社提供の企業研修プログラム『インサイトフル』を導入いただいた企業様のプログラム導入に至るまでの経緯をご紹介していきます。
インタビュアー:中牟田、本間
カスタマーパフォーマンス&CAE・実験技術開発本部
カスタマーパフォーマンス&第一車両実験部
Nissan第二商品性&実験統括グループ 菊池様 星宮様
写真 左から3人目が星宮様、左から5人目が菊池様
きっかけは上司のひとこと「他の仕事全部吹っ飛ばしていいから、このセミナーに行ってきて」
中牟田:さっそくですが、デコムを知ったきっかけを教えてください。
菊池様:上司から「菊池、絶対ハマるから受けてきて」と言われたことがきっかけです。以前『無料セミナー』を開催なさっていましたよね?そのころ、セミナーに対する説明は何もなく上司から「細かいことをが私が説明するより、実際に見てきた方が絶対私が言いたいことが伝わると思うから、受けてきて」「他の仕事全部吹っ飛ばしていいからこの時間空けて五反田(注:デコムの所在地)に行って!!」と言われました。
中牟田:とりあえず行けばわかるといった感じだったんですね。
菊池様:そうです。そのときに受講した無料のセミナーが私としても衝撃的で。というのも我々がやっている本業に十二分すぎるくらい活かせる内容だったからです。それからというもの、どうにかして我々の仕事の中に取り込んでいきたいというモチベーションが猛烈に湧いてきました。
我々の業務では「インサイト」という言葉を実はよく使います。ただ「そもそもインサイトとはなんぞや」というところを体系立ててきちっと理解するというところが不足しているのです。具体的には「ニーズとインサイトとの違い」などについて、ちゃんとした定義や理解がなかったのです。
中牟田:つまり課題は「インサイトという言葉は業務上で使われていたものの、その明確な定義がなかった」という点だったのですね。
「お客さま理解って?」「なにを理解したことになったのだっけ?」の打破
中牟田:チームのメンバーや部署の方々はみなさんインサイトという意識をお持ちなのでしょうか?もしよろしければ、お仕事の内容と絡めながらお話しいただけますか?
菊池様:私たちは商品性実験部に所属していて、目標を作りお客さまに価値を届けることをしています。その中の大きなレスポンシビリティに「新型車の開発における目標性能を立てる」があります。
その目標性能を立てる前提として「どういうお客さまに買っていただきたいからこの車を作るのだ」ということがきちっと定義されていること、明確になっていることが非常に重要なのです。
開発の初期段階で、市場情報統括本部 & 商品企画という我々とは別の部署が顧客理解のための社内横断的なイベントを実施します。
これは、次の新型車開発におけるターゲットカスタマーを深く理解することが目的で、何十年も続いてきた歴史あるイベントなのです。
しかしながら、我々がよく使う単語「お客さま理解」については、何をどう理解すればお客さまを理解したことになるのかという
曖昧な部分が このイベントを通しても完全には払拭できない状態でした。
自動車業界の中でかなり珍しいと思いますが、日産では開発部門の実験部隊もそういうものを考えているのです。
中牟田:ありがとうございます。確かに一緒にプロジェクトを進める中で、良いインサイトの定義づけなどの共通言語を持っていると非常に進めやすいですよね。
何回も何回もフィードバックをもらって実践することが不可欠
中牟田:それでは今回、『インサイトフル』にお申込みいただいた背景をもう少し具体的にお聞かせいただけますか?
菊池様:昨年大松さん(注:デコム代表取締役)にご協力いただき、社内で『インサイトスクール』を始めたところ、受講生の多くが「これを商品企画のメンバーと一緒に受けたい」とアンケートに記入しました。これらの回答から「多くの人的・時間的リソースをかけて実施する社内イベントの効果をもっと高めたい」という気持ちを商品性実験のメンバーの多くが抱いていることがわかりました。
星宮様:私は昨年インサイトスクールに受講生として参加しました。インサイトの発掘、またバリューやアイデアの提案、発掘といったところがすごく体系的に整理されていることにとても感動しました。
これまで弊社の中では、価値提案みたいなことをどちらかと言えば手探り状態でやってきました。「それがどうやったらできるのか」などについては、思いつきでしかないように私からは見えることが多かったんですね。
ただ、バリューやアイデアの提案、発掘のプロセスなどを実践してみると案外難しくて。「自分は、できないな」とか「センスがある人はできるのかな?」などいろいろ気づきはありました。
しかし最も痛感した課題は「短時間ではできるようにならない」という点でした。「何回も何回もフィードバックをもらってやっていかないと実力がつかないな」と思っていたところに、今回のインサイトフルな人材育成というプログラムがリリースされたことを知りました。論理だててHOWのところをやる点、たくさんのフィードバックを受けられる点など、まさに期待通りのカリキュラムでしたので、導入させていただきたいと思った次第です。
菊池様:僕はしつこい男だったので、去年何回かやらせてもらったワークショップの後にどうしてもその日の振り返りをデコムさんとやりたくて。都度デコムのスタッフの方を捕まえて、10分といわず30分と。(笑)
そのときにスタッフの方にずっと言われ続けたのが、本当に「続けることしかないですよね」と。「やって繰り返して、そういうことかと腹落ちするまでやり続けないと、1日でこんなことができるようになる人はそうそういないです」と。「デコムの社員も訓練というか、そういうことを繰り返してきてできるようになってきている」というお話をされていたのがとても印象的でした。
中牟田:理論のインプットと、ワークショップによるアウトプット、更には適切なフィードバックを数多く受ける機会として『インサイトフル』をご選択いただいたのですね。
商品から離れてお客さま、人を見に行きたい。手引きとなるのは「事例集」か
中牟田:実は今、デコム社内でワークショップで使うシートの改良を検討しているんです。もう少し段階を細かく把握できるフォームにすることを議論しています。本間が推進しているので、もし何かリクエストがあればお聞かせいただけますか?
星宮様:期待値に応える回答か分かりませんが、やはり「一朝一夕には難しいな」というのが私の意見です。そうすると、じゃあ自分の持っている引き出しというか、検討のための材料が足りないなと思ったときに、他社事例とか分析の事例、そういったいろんな例がほしいと思いました。それは講座の中でなくてもよいのです。あくまでも自分で学習する時に「こういった視点があるのだ」という気づきを得ることが目的なので。ですから、参考書や事例集のようなものがあると私は嬉しいです。
菊池様:僕も同じですね。僕らは自動車業界に属していますが、自動車業界だけでとどまってものを考えていてもしょうがないよね、と。大松さんもよくおっしゃるのですが「商品から離れてお客さま、人を見にいく」こと。「人を見に行く」という行為は頭では分かっているつもりですが、なかなか難しい。しばしば既存の会社文化として身に染みちゃったものに惰性で戻ってしまうことがあります。
そこで他社さんの事例がそんなにポンポン出せるものではないというのは重々理解していますが、「我々の業務に近しいところのGood Exampleが掲載されているバイブルのようなものがあるといいな」というのが本音です。本当であれば自分たちで作れるのが一番いいのですけどね。
本間 :たしかに『インサイトフル』だと、フィードバックをしてやりとりをしながらになるので、バイブルのようなものが徐々にはできあがっていきますが、最初の時点で事例が積みあがることは確かに難しいですね。
特にアイデアの一番最初の部分で、お客さまのどこに価値があるのかをどう引っ張り出すのかというところがすごく難しいことは理解しています。貴重なご意見をありがとうございます。
”欲望マンダラ”で日頃の行動がスッキリ分解できた「俺の気持ち、デビルにあふれている」
本間 :今お話を聞く中で、デコムからのアドバイスは「繰り返し」が多かったようですが、これが一番参考になったというのは何かありますか?
菊池様:私の実体験でいうと2つのワークショップがとりわけ衝撃的でした。
一つ目は初めて受講した無料セミナーで体験した「チマチマインサイト」です。
本間:ありがとうございます。初めて耳にする方のために少しだけ「チマチマインサイト」について説明させてください。
これは、当社が過去に取り組ませていただいたプロジェクトでの事例に由来しています。
毎月届くタイプの幼児向け教材ビジネスの新規獲得に関して、アンケート調査を行いました。そこでは非入会の理由として『値段が高い』『家の中に物が増える』が上位を占めていました。
しかし、『インサイトリサーチ』によって本当に不満に思っていることを探ったところ『バリバリ働いていた日々に比べ、チマチマした日々にチマチマした教材が送られてくるのはまっぴらごめん』というキーインサイトが明らかになったのです。
そこで『ダイナミックな体験を与えて子どものやる気を引き出す教材』というバリュープロポジションを再定義した上で、クリエイティブやプロモーションの改善を図ったところ明らかな成果につながった、という事例です。
このようにキーインサイトを特定した後に、より広い領域(「幼児向け通信教育」から「育児・生活」の領域)に視座をあげ、バリュープロポジションを構築するしたこの事例を、キーインサイトにちなんでチマチマインサイトと呼んでいます。
菊池様:そのチマチマインサイトを非常に腹落ちした講義のあとで、他の企業の方々とやったところ、ものの見事に大松さんにハマったっていう感じでした。「君たちの考えではどうせこれぐらいまでしかいかないだろう」と。まるで雷が落ちたみたいな衝撃でしたよ、僕的には。
セカンドショックは『欲望マンダラ』(注:人間の欲望をデビルとエンジェルの両面から一覧化した、デコムオリジナルのマンダラのこと)です。あの通りだなと思って。ヘルシーマックの話じゃないですけど。僕、実は講義で『欲望マンダラ』を学んだ直後に、自分の日頃行っていることを書き起こして上司に送ってみたのです。
どういうことを送ったかというと、まず家に帰ると妻が夕食を用意してくれていますと。で当然その夕食を食べるのですが、帰る前に「帰るよ」と一報入れると、妻が「今日のご飯は○○ね」と返信をくれるのです。
でも、その日食べたいものと用意された食事が違うことってありますよね。そんな時奥さんに悪いって思いながら、ちょっとコンビニに寄って、カップラーメンとかジャンキーなフードとかを買う、と。それを食べつつ奥さんが作ってくれたものを食べるとなると、どう考えたってカロリー過多なわけですよ。
そうすると、そのカロリー過多を帳消しにできるわけもないのですけど、トクホの健康サポート飲料のお茶を買ってみたりして。「奥さんの料理はありがたく食べます、ただ僕は食べたいものと両方食べる、でも太りたくないからヘルシーなお茶も買っています」とアピールしている自分に気づいてしまった。そんな内容のメールを上司に送りました。
こうやって自分の実行動というか日頃の行動に当てはめると「これとこれか」って腑に落ちるものがいっぱい思い当たるのです。
それからですかね、受講生には「これさ、デコムさんで習った『欲望マンダラ』のデビルでみるとどう?」と尋ねるようになりました。みんなきれいに書きたがるのですよ、カスタマーはこうでこうで、プロフィールから入っていって、きれいな風に書いてもしょうがないんだよなって。文章にはしづらいのですけどね。
星宮様:でも受講した結果、書いていいのだなって認識を改めました。「こんなこと書いちゃっていいのだな」「確かに自分の気持ちはデビルにあふれてるな」ってしみじみしてしまって。「奥さんのためとか言いながらこのワイン、自分のためだよね」みたいな。
こんな時代だからこそ、感動や驚きをお客さまに届けたい
中牟田:最後に、チームで一番大事にしていること、普段こういうことを大事にしてお仕事されている、ということがありましたら教えてください。
星宮様:冒頭の説明と重複しますが我々日産自動車の商品性実験という部署は、目標などを作りお客さまに価値を届けるということを実施しています。そして心の中で大切にしているのは、お客さまに感動とか驚き、信頼を提供することです。そういうことを大事にしているのですが、やはり感動とか驚きを提供することは難しい時代になっていて、非常に困っています。
従って今回デコムさんの講座で「少しでもそのありたい姿に近づけるように」ということを期待しておりますので、よろしくお願いします。
中牟田:ありがとうざいます。大きな期待を寄せていただき、身が引き締まります。本当に前向きにお取り組みいただいていることが分かり、とても嬉しく思っています。本日は貴重なお話をお聞かせ下さり、ありがとうございました。
星宮様・菊池様:こちらこそありがとうございました。