市場調査とは、市場の動向やトレンド、自社の商品やサービスの認知度、顧客のニーズを調べるための活動です。この調査結果を基に、「マーケティング戦略」や「商品開発・改良」といった意思決定が行われるため、重要な調査だと言えます。
市場調査とマーケティングリサーチの違い
「マーケティングリサーチ」と「市場調査」は、時に同じ意味で使われることがありますが、厳密には異なる概念です。定義、活動の違いは以下の通りです。
定義の違い
- マーケティングリサーチ:
データや数値を基に現在の市場動向を調査し、さらに未来の市場動向を考察する。 - 市場調査:
データや数値を基に、過去から現在の市場動向を調査する。
活動の違い
- マーケティングリサーチ:
現在の市場動向を踏まえ、未来を予測する活動。 - 市場調査:
過去から現在に焦点を当てた調査活動。
このように、定義と活動とも時間軸が違うことが両者の大きな特徴です。両者の違いを認識した上でどちらの調査を必要としているのか明確にし、調査に移っていきましょう。
市場調査で収集するデータの種類:定性データと定量データ
市場調査では、収集するデータを定性データと定量データに分けることができます。それぞれのデータの特徴と役割を理解することで、調査の目的に合った選択を行うことができます。両者の違いやメリット、デメリットは以下の通りです。
定性データとは?
- 内容:
顧客が「どのように思っているか」「何を感じているか」など、主観的な情報を含むデータ。 - 例:
商品に対する感想、使用感、満足度に関する言葉や意見。
定量データとは?
- 内容:
顧客が「何回リピートしたか」「購入頻度はどれくらいか」など、具体的な数字や統計情報を示すデータ。 - 例:
販売件数、購入額、リピート率。
データ収集のポイント
どのデータを収集するかは、調査の目的やコストによって決まります。よって、調査設計時に定性データと定量データのどちらがより効果的かを選択することが重要となります。
定性、定量データのメリット、デメリット
定性、定量データのメリットとデメリットは以下の通りで、それぞれ一長一短の特徴があります。自分の行う調査の目的を明確化した上で、そのためにはどちらが有効か選択する必要があります。
定性調査 | 定量調査 | |
メリット |
・定量調査では捉えられない対象者の生の声を収集できる ・予期せぬ新しい視点の意見を得ることで、製品改良や開発に新たな気づきを得られる |
・調査結果を数値で把握できるため、理解しやすい
・回答を得やすく、多くのサンプルから全体的な傾向を把握できる |
デメリット |
・情報を持つ対象者のリストアップやヒヤリングに多くの手間がかかる ・インタビュアーの技能によって、収集する情報の量と質が大きく変動する |
・質問文や選択肢の表記によって、調査結果が大きく変化するリスクがある
・選択肢式のアンケートのため、回答が用意された選択肢の範囲に限定される |
市場調査の目的と種類
市場調査にはいくつかの目的があり、それに応じた調査の種類が存在します。例えば、以下のような調査目的、方法があります。
1. 販促調査
- 目的:販売量を増やすための効果的なプロモーションを見つける。
- 方法:広告やイベント案を顧客に見せて評価を得る。評価の高い広告を実際にテレビや交通広告で使用する。
2. 価格調査
- 目的:自社商品について、顧客が「妥当」と感じる価格を調べる。
- 方法:顧客に商品を見せ、複数の価格案から購入意欲が高いものを選んでもらう。
3. 商品開発調査
- 目的:新商品の開発にあたり、顧客のニーズや不満を把握する。
- 方法:実際に既存の商品を使用していただいた後に、アンケートやインタビュー(対面調査)を通して顧客の潜在的なニーズやインサイトを明らかにする。
4. ブランドイメージ・満足度調査
- 目的:自社ブランドや商品が、競合と比較してどれだけ認知され、評価されているかを調べる。
- 方法:上記と同じくアンケートやインタビュー、最近はインターネット調査なども。定量的に調査、比較を行う。
市場調査の手法
市場調査には様々な手法があり、目的だけでなく予算に応じて適切なものを選ぶことも大切です。以下は市場調査の代表的な手法です。各手法の一長一短を理解し、自社の目的に合ったものを選ぶことが市場調査の成功の鍵だと言えます。
アンケート調査 | インタビュー(対面調査) |
対象者に質問して回答を得る、一般的な市場調査手法。
・利点:低コストで実施可能。 ・適用場面:ブランドイメージや顧客満足度の大規模調査に適している。 ・注意点:質問内容によっては、回答が偏る可能性がある。 |
調査員と対象者が対面で行う市場調査。
・利点:回答に応じて柔軟に質問を変更可能で、質の高い情報を得られる。 ・形式:グループインタビューは複数人で実施し、デプスインタビューは1対1で実施。 |
街頭調査 | ネットリサーチ |
電話を通じて対象者の意見や感想を聞き出す市場調査方法。
・利点:電話がつながれば即座に回答を得られるため、短期間で調査が可能。また、質問次第で、顧客の気づいていない本音を引き出すことも可能。 ・活用例:民間企業、政府機関、自治体。 |
インターネット上で質問やアンケートを行う市場調査方法。
・利点:全国から情報を収集可能。集計が簡単で、短期間で調査が可能。 ・注意点:謝礼目的で不真面目な回答をする人がいる場合がある。また、誤差を考慮してデータを活用する必要もある。 |
ホームユーステスト | ショップアロング調査 |
顧客に実際の商品を使用してもらい、感想や意見を収集する市場調査方法。
・利点:実際に使用した上でのリアルな意見を集められる。 ・適用場面:商品の満足度や改善点を調査したい場合に適している。 ・活用例:化粧品、食品、ペット用品、家電製品など。 |
対象者の買い物の様子を観察し、その後インタビューを行う市場調査方法。別名で「アカンパニードショッピング」や「顧客観察調査」とも呼ばれる。
・特徴:購買時の心理や行動をその場で探ることが可能。 ・事例:マクロミルが店頭購買分析や視線データの定量分析を提供。 |
どの世代にアプローチしたいのか、どのくらい回答の結果が予想できているのか、コストをどれだけかけれるか、など、具体的に調査について想定をした上でどのような調査を行うか決定しましょう。
市場調査の手順
市場調査を行う際には、以下の手順に沿って進めると良いでしょう。
- 調査目的の明確化
- 必要なデータとその目的を明確にする。
- 調査設計
- 調査目的や予算、スケジュールを基に手法を選び、仮説を立てる。
- 調査実施
- 設計に基づき実際に調査を行う。準備が調査の効率を左右する。
- 分析・検証
- データを集計し、仮説の正しさを検証。課題を発見する。
- 意思決定・アクション
- 得られた課題を元にマーケティング施策や商品開発を行う。
この一連のフローを経ることで、市場調査が完了します。この中でも調査設計の部分が最も重要であり、ここの項目がずれてしまうと得られるデータ自体があまり効果的なものでなくなってしまいます。そのため、1.2.のステップを特に綿密に行って適切なデータ収集を行うことを目指しましょう。その後の分析段階については、最初に正しいデータが取得出来ていればやり直しも効きます。それだけ最初のデータ収集は重要なのです。
まとめ
市場調査は、効率的に顧客のニーズを発見するための手段です。ただし、それ自体は課題を「発見」するまでのプロセスに過ぎません。重要なのは、調査結果から得られた課題をどのように商品開発やマーケティング施策に反映させるかです。しっかりと市場調査を行なった後に得られた結果から、必要な施策を模索し実行すれば、多くの効果を得ることも可能ですよ。
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