商品開発の方法と成功へのポイントを解説 | 株式会社デコム
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商品開発の方法と成功へのポイントを解説

1. 商品開発とは?

商品開発は、企業が競争の激しい市場で生き残り、成長を続けるための重要なプロセスです。特に消費者の価値観やライフスタイルが急速に変化している現代では、これに合わせた商品リニューアルや新商品開発が求められます。本記事では、商品開発を始めようとする方に向け、その方法や流れ、成功のためのポイントを解説します。

2. 商品開発の種類

商品開発には「新商品の開発」と「既存商品の改良」があります。

新商品の開発

新商品の開発は、市場にはまだ存在しない商品やサービスをゼロから作り上げるプロセスです。このプロセスの中心は、消費者ニーズや市場トレンドの把握、そしてそれに基づく商品企画です。ゼロから生み出すイノベーションが求められ、新奇性と受容性の両立や商品コンセプトを明確にすることがポイントです。

既存商品の改良

既存商品の改良は、すでに市場で販売されている商品に新しい価値を付加するプロセスです。現状分析に基づきベネフィットの強化や問題を解決したり、現在のターゲット層をずらしてみることなどで検討されます。この方法では、これまで築いたブランドを引き継ぎながら行う必要があり、現状のブランド価値の維持と進化がポイントとなります。

表:新商品開発と既存商品の改良の違い

項目 新商品開発 既存商品の改良
目的 ゼロから新しい価値を生み出す 既存商品に新しい価値を追加し競争力を高める
アプローチ 「0を1にする」:市場にない商品を作る 「1を10にする」:既存商品を進化させる
必要な調査・分析 – 市場調査

– 消費者ニーズ

– トレンド分析

– 現状分析

– 顧客の声

– 競合の動向調査

重要なポイント – 新奇性と受容性の両立

– 商品コンセプトの明確化

– 現状の課題解決

– ブランド価値の維持と進化

リスク 市場に受け入れられないリスク 既存顧客の離脱やブランド価値の低下のリスク

3. 商品開発のポイント

成功する商品開発のポイントとして以下の3つがあげられます。

● 消費者インサイトの理解

商品開発で最も重要なポイントは、消費者が本当に求めているものを深く理解し、それに応える商品を開発することです。そのためには、「n=1」に着目した分析を行い消費者の解像度を上げることや自社カテゴリにとどまらず、広く”人間を見に行く”ことが大切です。

●市場トレンドの把握

時代とともに変化する消費者の価値観や生活スタイルがとらえられていなければ、どれだけ優れた商品を世の中に出しても受け入れてもらえません。市場トレンドの中から生活者の変化点をいち早く見出して商品開発に役立てることで、よりヒットする商品を生み出すことができます。

● 競合優位のポイントを明らかにする

商品開発をする際には他社商品との優位性を明確にして、自社独自の商品特徴を出していくことが大切です。他社との差別化が不十分であれば、市場での競争力を失い、価格競争に巻き込まれる可能性があります。「なぜその商品を自社で開発する意義があるのか?」という視点を中心に、自社独自の価値を創出するプロセスを徹底しましょう。

4. 商品開発の流れ

ここでは商品開発に関する一連の流れを説明します。以下の順に沿って商品開発が成されます。

① 市場調査

まず、市場調査で競合他社を含む市場環境やトレンド、消費者インサイトを理解し、商品開発の切り口を探します。調査方法としては以下の二つです。
定性調査:デプスインタビューやフォーカスグループなどを通じて、消費者の具体的な課題や価値観を深掘りします。
定量調査:アンケートやビッグデータ分析を活用して、広範囲なニーズを特定します。
商品開発の切り口を探す際には定性調査の方がより効果的です。

② 商品コンセプトの作成

調査結果をもとに、商品コンセプトを明確化します。コンセプトとは「価値の方向性の定義」のことを言い、商品コンセプトは主に「誰に」「どのような価値を」「どのように提供するか」を定義したものになります。商品コンセプトは、チーム間での共通理解を深め、円滑なコミュニケーションを促進するとともに、プロモーション・販売戦略の策定を容易にすることに役立ちます。
主な構成要素は以下の6つです。

1. ターゲット(誰に)
2. 顧客インサイト(消費者の本音)
3. 商品ベネフィット(どのような価値を提供するか)
4. 差別化ポイント(競合商品との差別化)
5. 商品特徴(具体的な仕様や要素)
6. 使用シーン(どのように使われるか)

商品コンセプトができた後に市場にその商品が受け入れられるかどうかを図るコンセプトテストを行うと、より精度が増します。対象者に商品コンセプトを提示した上で購入意向やユニーク度などのスコアを算出し、評価が高ければ商品開発に進みます。

③ プロダクト開発

商品コンセプトに基づいて、まずは試作品を作成します。プロダクト開発では商品コンセプトに加え競合優位性や商品のポジショニングを明確にして開発チームにしっかりと示せるようにしておくことが大切です。
作成した試作品は安全性や耐久性を調べるテストを行いながら改良を進めていきます。また、想定顧客の反応を見るリサーチを行ったり、後発品をなるべく防ぐために開発などの特許を申請しておくこともあります。

④ コミュニケーションコンセプトの作成

開発したプロダクトの魅力を最大限に引き出し、購入につながるようなプロモーションの軸となるメッセージを設定したものがコミュニケーションコンセプトです。ブランドネームやパッケージ・広告などの表現を検討する際に活用できます。作成する際、「競合との違いが明確か」「ターゲットを意識できているか」「トレンドや潮流を意識・配慮しているか」の3つを十分に検討することで、より効果的なコミュニケーションコンセプトを作ることできます。

⑤ 価格設定・市場投下

市場投下に向けた価格設定について、以下の3つの基本的な基準をご紹介します。

・原価基準

原価回収を軸に利益を上乗せして価格を設定する方法です。利益は確保しやすいですが、消費者の目線が欠けているため注意が必要です。

・需要基準

消費者がいくらなら買ってくれるかという視点で価格を設定する方法です。市場調査を通じて価格を探り、状況によっては原価を下げる必要があります。

・競合の状況に関する基準

市場価格を把握した上で、競合商品の価格に応じて価格を設定する方法です。シェアを獲得する為には競合より価格を安く設定する、または品質で優れている場合には価格を高目に設定するなどの戦略を取ります。こちらも原価の調整が必要となる場合があります。

 

上記の基準を踏まえて価格を設定した後に、市場導入に向けた施策を展開します。ターゲット層を意識した販売チャネルの適切な選定や、SWOT分析などを用いて市場環境を把握し、広告、プロモーション、SNS活用、キャンペーン実施など効果的に組み合わせたマーケティング施策を計画・実行していく必要があります。市場投入後は市場の反応を継続的にモニタリングし、商品が消費者に受け入れられているかを確認することが重要です。

5. 商品開発に使えるフレームワーク

商品開発には、次のようなフレームワークが役立ちます。市場調査やポジショニングを検討する際などに活用してみましょう。

SWOT分析:自社の強み(Strength)・弱み(Weakness)、市場の機会(Opportunity)・脅威(Threat)を整理し、戦略を立案します。
3C分析:ミクロ環境の要因を、市場環境・顧客(Customer)・競合他社(Competitor)・自社(Company)に分け、マーケティングの環境を抜けもれなく把握します。
PoX分析:Difference、Parity、Failureの3つの観点で考えるフレームワークです。

※ 参考記事:競合分析フレームワーク「Points Of X」

関連記事:Mizkan様

”メインではボトムアップ提案時、自分たちから新商品を発想する時に活用していたのですけれども、インサイトを要素ごとに分けて考えることで、現在販売されている商品の価値を再確認したり、逆に改良すべき点を整理しやすくなったと感じています。結果的に他の方にも伝えやすくなると思いますので、今後も活用していきたいです。”
Mizkan様インサイトスクールインタビュー研究開発からボトムアップで組織改革【インサイトスクール導入事例】開発技術部門からボトムアップでヒット商品を狙う。マーケティング活動を生活者起点で底上げする新たな取り組み|Mizkan様

6. 事例及び関連記事

事例:味の素「パスタキューブ」

”大ヒット商品「パスタキューブ」の生みの親である味の素社マーケターの梶敬氏にインタビューを行いました。“ワンパンパスタ”に使えるキューブ上のパスタ用調味料という革新的なコンセプトは、梶氏自らが行ったn=1の消費者インタビューで発見したインサイトが起点となっています。”
味の素様インタビュー支援事例インタビューパスタキューブ開発の裏側【n=1インタビュー支援事例】味の素マーケティング改革から生まれたヒット商品の舞台裏|マーケターが行ったn=1インタビューで発見したインサイトとは?

関連記事:既存ブランドのリニューアルを成功させる9つのルートとは?

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”手段は違えど、その前提となるのは、独自の価値を際立たせることが難しい成熟した市場で戦うということです。”
既存ブランドのリニューアルを成功させる9つのルートとは?

まとめ

商品開発は、消費者ニーズを的確に捉え、消費者起点で提供価値を創造することが何よりも重要です。また、商品は一度市場に出して終わりではなく継続的な改善を行うことで、長期的な競争優位性を確立できます。企業として新たな価値を生み出すために、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。

 

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