戦略PRとは?注目される背景と方法、メリット・デメリットについても解説 | 株式会社デコム
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戦略PRとは?注目される背景と方法、メリット・デメリットについても解説

ビジネスにおいて、優れた商品やサービスを提供するだけでは成功は保証されず、適切なメッセージを届けることで認知を増やして消費者の関心と支持を集めることも重要です。

今回はブランド価値を高める効果的な情報発信である戦略PRについてご説明します。

戦略PRとは

戦略PRとは商品やサービスを直接PRするのではなく、世の中のトレンドや社会課題に対する関心を活用しながら消費者やステークホルダーに働きかけ、ブランドの価値向上や市場の形成、『買ってもらう空気』を作っていくことです。

PRと戦略PRの違い

PRと戦略PRの違いは以下の通りです。

PRとは商品そのものを中心に企業が発信し、メディアや消費者に話題にしてもらうことを指します。企業の公式発表やプレスリリースを通じて、商品や企業の正確な情報、基礎情報を伝えることに適しています。主に「何を伝えるか」に重点を置き、広告やニュースリリースなど一方向的な情報発信になりやすい特徴があります。

一方、戦略PRは社会のトレンドや世論に関連付けたストーリーを作り、商品が自然と話題化することを目指す方法です。そのため、トレンドや世論と結びつけるためのストーリーがいかに共感されるかが重要です。自然と話題にしてもらうことを目指し、SNSやインフルエンサーなどを積極的に活用していきます。単なる情報発信ではなく、「社会とのつながりを生むこと」がポイントです。

項目 PR(広報) 戦略PR
話題の作り方 商品そのもの を中心に情報を発信し、話題にしてもらう 社会のトレンドや世論に関連づけてストーリーを作り、商品を話題化 する
情報の伝え方(発信手段) プレスリリース、広告、記者会見、SNSなどで一方向的に発信 メディアや消費者自身が「話題として取り上げたくなる」仕掛けを作る
ニュース性・拡散の仕組み 商品情報をメディアに提供し、報道してもらう 社会的に意味のあるストーリーを作り、自然に広がるようにする
消費者の反応 「こんな商品があるんだ」と受け取る 「この商品は今の社会の流れに合っている!」と共感し、シェア・拡散する

戦略PRが注目される理由

ここでは戦略PRが注目される理由をご紹介します。

インターネットやSNSの普及による情報拡散の変化

戦略PRが注目される背景には、情報の伝わり方の変化があります。インターネットの発達やSNSの利用によって情報の拡散の仕方や、消費者の情報の受け取り方が複雑になり、従来どおりメディアや広告でメッセージを発信しているだけでは、意図した通りに情報が伝わらないことが増えてきました。また最近では消費者一人一人が情報発信の主体となっており、より複雑さが増しています。そのため、戦略性を持って情報を発信したり、管理していくことの重要性が高まっています。

競争の激化

いい商品やサービスを作りさえすれば売れるような時代は終わりました。商品の性能や価格だけでは差別化が難しく、より戦略的に企業のブランド価値を高めることで差別化を図る必要性に迫られています。競争が激化する中で、いかに消費者の購買意欲を喚起し、ブランドの独自性を確立するか が重要なポイントになっています。そのため、戦略PRを活用し、市場の流れを先読みしながら「買う空気」を作ること が欠かせません。

消費者のブランド価値や企業価値意識の変化

成熟した市場において消費者や投資家などのステークホルダーは商品性能だけでなく、企業の社会的責任やブランド価値に敏感になってきています。そのため発信するコミュニケーションは信頼や共感を得る必要があり、社会の空気感やトレンドに対して受け身でいるだけでなく積極的に関与し、社会の空気を自ら醸成していくことが求められます。

戦略PRのメリットとデメリット

メリット

競争力の強化

戦略PRを通して消費者の共感を得やすい活動を行ったり、社会的関心の高い課題に取り組むことは企業価値や商品価値を高めることに繋がります。それにより、他社と差別化された独自の価値を打ち出すことができ、市場での競争優位性を作ることができます。
そのためには、消費者インサイトやトレンドを正確に捉えることが重要です。ターゲットが何を求めているのか、どんな社会的テーマに関心を持っているのかを理解し、それをPR戦略に反映させることが大切なポイントです。

信頼関係の構築

戦略PRでは、単に商品の良さを直接伝えるのではなく、話題を生み出す仕掛けを行います。そうすることで、口コミを通じた自然な情報伝達や、インフルエンサーによる情報発信など、信頼性の高い第三者からの情報が増えることになります。結果として、消費者の信頼度を高めることに繋がるのです。さらに、社会との関係性の中で行われるPRは企業の社会的存在意義が強調され、信頼関係をより強固にします。

長期的な収益につながる

ブランド価値の向上につながる戦略PRは長期的な収益を生み出します。購買促進を目的とする短期的な広告とは異なり、ブランド理念や企業の社会的意義に共感を得られるためファンとなる顧客を生み出すことが出来るからです。ファンを作るためにも、ストーリーテリングを積極的に活用したり、世の中の関心や問題意識を的確に把握したうえで共感や感情を揺さぶるメッセージを発信していくことが重要です。また、広告のように一方的な発信にとどまらず、コミュニティを築きながら双方向のやり取りを行うことも有効になります。

デメリット

時間がかかる

戦略PRは世の中の世論や空気感を醸成することを目的としています。そのため、消費者の意識や行動を変えるまでに時間がかかり、即効性は低くなります。また、戦略PRは単なる広告とは異なり、社会課題やトレンドを見極め、それに合わせて話題を喚起するプロセスを必要とするため時間がかかります。口コミなどによって徐々に拡散されるため、その波及速度も緩やかです。短期的な目標を設定し、段階的に効果を測ることで対策を行いましょう。

情報の解釈をコントロールできない

戦略PRでは直接的なメッセージを発信をしない為、情報の解釈を受け取り側にゆだねることとなります。そのため伝えたい意図と異なる意図で拡散されてしまう可能性があります。また社会の価値観やトレンドは常に変化しており、時間経過と共に、メッセージが別の意味で伝わってしまうこともあり、コントロールが非常に難しいです。
そのようなリスクを避けるためも、メッセージを明確にしたり、消費者の視点を正確に捉えてメッセージの受け取られ方のシミュレーションをしておくことが重要です。

戦略PRを行う上でのポイント

目的・ゴールを明確にする

戦略PRは単なる情報発信ではなく戦略的に話題を作る手法だからこそ、目的・ゴールを曖昧にしてしまうとPRの方向性がブレてしまいます。例えば、目的が「ブランド認知を高める」「企業イメージを向上させる」「売上につなげる」など、どれなのかによって戦略・手法は異なります。数値で状況を把握できるKPIを設定したり、短期的な目標だけでなく、長期的な目標も掲げましょう

社会課題やトレンドを把握する

ここまでお伝えしてきた通り、戦略PRでは自然に話題を作り出すことがキーとなります。社会のトレンドや世の中の空気感からズレたメッセージを発信してしまうと消費者に響かないどころか、企業評価を下げてしまうことにもなりかねません。これを避けるためにも、事前にリサーチなどを活用して正しく社会や消費者をつかみましょう。

ターゲットを明確にする

全ターゲットに刺さるメッセージは存在しません。ターゲットを明確にすることは、特定の層に確実に響くメッセージを設計し、PRの効果を最大化することができます。ターゲットを設定する際にはペルソナを作成したり、それに応じたメディア選定などを行いましょう。

コミュニケーション

戦略PRでは一方向の情報発信ではなく双方向のコミュニケーションが重要です。対話をすることは継続的な認知の向上に繋がったり、消費者や社会意識を変えていくことを可能にします。手段としてはSNSを使ったり、インフルエンサーを活用して消費者目線でのメッセージ伝達やコミュニケーションを行ってもらったりすることがあります。

ストーリーテリング

戦略PRでは単にデータや事実を伝えるのではなく、共感を得られる「ストーリー」を作成することが重要です。商品価値を伝えるだけでなく、社会的な文脈や消費者のインサイトに基づいた感情に訴えかけるストーリーを作ることでブランドの信頼性や価値を高めることができます。

戦略PR実施の流れ

1.目標設定

戦略PRの目標設定では、次の2つの要素を明確にすることが重要です。

① 目的・KPI

戦略PRは効果がすぐに表れにくいので明確な目的と、それを達成するためのロードマップ を設定することが重要です。目標を立てる際には短期的な目標と長期的な目標の設定を行いましょう。また、この目的は「企業がPRを通じて実現したいこと」で、単なる情報発信ではありません。社会やステークホルダーに対してどのような影響を与えたいのかを明確にしておく必要があります。
KPI(重要業績評価指標)を設定をする際は、メディア掲載数、SNSでの言及数、ブランド好感度などが活用できます。測定可能な指標を用いて効果測定が出来るようにしておきましょう。

② ターゲット設定

ターゲットを定める際は、年齢、性別、ライフスタイル、価値観などを細かく定義 し、ペルソナ(具体的なターゲット像)を作成してみましょう。例えば、「20代のエコ意識が高い層」 なのか、「新しいテクノロジーに敏感なビジネスパーソン」 なのかによって、使うメディアや伝えるべきメッセージが変わってきます。

2.社会課題やトレンドからインサイトの把握

戦略PRにおけるメッセージは社会潮流やターゲットの課題や意識、関心と結びつきが無ければ効果を発揮することが出来ません。WEB調査やSNS分析を用いてリアルな関心を知ったり、インタビューなどを用いてターゲット意識を深く理解しましょう。

ターゲット心理を理解する際にはぜひ、弊社のインサイト分析を参考にしてください。

”今さら聞けない!? これだけおさえれば大丈夫 「インサイトの基本」”

3.ストーリーや社会的文脈の作成

ターゲットの解像度が上がり、社会トレンドを把握できたら、次はそれに沿ったストーリーの作成が必要です。自然な話題化を狙うためにもターゲットが「自分事」としてとらえられるような内容に設計する必要があります。より個人に響くストーリーを作るためには、共感のポイントを明らかにし、ストーリーをシャープに磨く事が大切です。

4.メディア戦略

どれだけ良いPRでも適切なメディアに届かなければ意味がありません。ターゲットが接触するメディアを選定して、戦略的に露出を増やすことが重要です。また、話題化の段階に応じたメディアの使い分けも検討しましょう。自分事化するフェーズではSNSやブログ、インフルエンサーなどを活用し、コミュニティを築いて仲間間で共有されるフェーズではYouTubeやwebニュースSNSのコミュニティ機能などが有効的です。そして社会全体の空気感になるフェーズではテレビ・新聞、大手メディアなど、それぞれに効果的なメディアを検討してみましょう。

5.コンテンツ作成

話題となりそれが広く拡散されるためには、「シェアしたくなるコンテンツ」の作成が必要です。そのためにもターゲットの関心に即したフォーマットを利用しながら、感情に訴えかけるコンテンツを作成しましょう。SNSでの拡散を促進するためにハッシュタグなどを意識することや話題にしやすいキャッチーな見出しを工夫すること、ビジュアルや動画コンテンツを活用することなども有効です。

6.効果測定と改善

戦略PRは実施して終わりではなく効果を測定して次に活かすことが重要です。進捗状況の把握や、意図した通りに消費者にメッセージが伝わっているかなどを振り返りましょう。また、社会の状況やトレンドは常に変化するため、定期的に戦略やメッセージなどを見直し、時勢とのずれが無いように気を付けましょう。

戦略PRの参考事例

戦略PRの参考事例をご紹介します。

ユニクロのヒートテック

ユニクロのヒートテックは、社会的に関心の高い「テクノロジー」をファッションに持ち込むことで話題を生み出し、消費者の意識を変えた成功例です。

ヒートテックは「発熱する特殊繊維を使った革新的なインナー」として、科学的な側面を強調し、専門家のコメントやデータを用いたPR戦略を展開しました。これにより、単なる防寒インナーではなく、「テクノロジーを活用した新時代の服」としての価値を訴求しています。また、 「冬=厚着」の常識を覆す という強いメッセージを発信し、新たな市場を創造しました。消費者のライフスタイルそのものを変え、ヒートテックが「冬の新定番」として定着する流れを作ることに成功しています。

小田急不動産の分譲ブランド「リーフィア」

デコムでご支援させていただいた小田急不動産様の事例です。戦略PRに繋がる要素が多分にありますのでご参考に一読ください。

”本質的に「住まい」に何が求められているのだろうか?というところから知りたいという目的が一番にありました。インサイトは常に我々の暮らしの中にあり、無数に存在しているものだと思います。一方で、分析したインサイトが住まい選びの際にお客様に響くものかわからない中で、有益なインサイトを発見するためには、デコムさんのノウハウが必要だと感じました。”
”インサイトリサーチを通じてn=1の解像度を上げていくと、たとえば「少子高齢化社会」という話がさらにブレイクダウンされた社会課題として見えてくるんですよね。n=1を見にいくことで、一見大きな社会課題が「小田急不動産様が解決できる社会課題」にブレイクダウンされてくる、ということが大きなポイントかなと思います。”

次世代の暮らしに求められる本質価値とはなにか 生活者の想いをカタチに戸建て・マンションを企画する新挑戦|小田急不動産様

まとめ

戦略PRは、企業や商品の価値をステークホルダーにより効果的に伝え、長期的な競争力を強化することにつながります。そのためには、社会潮流やターゲットの心理を的確にとらえ、それに基づくストーリーやメッセージを設計することが重要です。
戦略PRは、企業の価値と社会をつなぐことで、ブランド成長を加速させる効果的な方法です。積極的に活用してみましょう。

 

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