本記事では、マーケティングや商品開発、顧客理解の現場で欠かせない「定量調査」と「定性調査」について、基本的な定義から、それぞれの手法や特徴、活用のコツまでを幅広く解説します。調査の設計方法や分析計画、さらには実務での活用例や最新のトレンドに ついても触れていますので、この記事で実践的なリサーチを学んでいただけると幸いです。
定量調査・定性調査とは?
初めに定量調査、定性調査の特徴と定義について解説します。
定量調査の定義と特徴
定量調査とは、数値データを収集・分析することで、対象となる集団の傾向や特徴を統計的に把握する手法です。アンケート調査やオンライン調査などが代表的で、選択肢形式で回答を得ることで、大量のデータを集め、傾向や割合、相関関係などを明らかにすることができます。
例:「週に何回コンビニを利用しますか?」という質問に対して、「0回」「1〜2回」「3〜4回」などの選択肢で回答を収集し、世代別に利用頻度を分析する調査が該当します。
定性調査の定義と特徴
定性調査とは、対象者の行動や意識、価値観、感情の背景にある理由を深掘りする手法です。インタビューやグループインタビュー(FGI)、観察調査などが用いられ、数値よりも言語データをもとに解釈・分析する点が特徴です。
例: コンビニでスイーツを買う理由を掘り下げるために、20代女性を対象にインタビューを実施し、「自分へのご褒美として買っている」といった言葉から購買心理を理解します。
データの性質と調査目的の違い
定量調査は「どのくらいか」を把握し、定性調査は「なぜそうなのか」を理解するのに適しています。定量データは客観的で汎用性が高く、定性データは個別性や背景理解に優れています。目的に応じて、両者を組み合わせて用いることが有効です。
参考記事:市場調査とは何か:求められているニーズを顕在化する手軽な手法
調査手法とそれぞれの強み・弱み
ここでは定量調査、定性調査の強み弱みについて解説します。
定量調査:主な手法・メリット・デメリット
主な手法にはオンラインアンケート、郵送調査、電話調査、街頭調査などがあります。
- メリット: 大量のサンプルが収集できる、統計処理によって客観的な傾向を把握できます。
- デメリット: 表層的な情報にとどまりがちで、設問設計によってバイアスが生じる可能性もあります。
例:「新商品の価格はどれくらいが妥当か」について、価格帯別の選択肢を設定したアンケートで消費者の希望価格帯を調べます。
定性調査:主な手法・メリット・デメリット
主な手法にはデプスインタビュー、FGI、エスノグラフィー(行動観察)などがあります。
- メリット: 消費者の価値観や行動の背景にある理由を深く掘り下げられます。
- デメリット: サンプル数が少ないため一般化が難しく、分析に専門性を要します。
例:「新商品に惹かれる理由」について、数人のユーザーと深く対話を行い、見た目やパッケージの第一印象が購入意思決定に大きく影響していることを発見することができます。
調査設計と実施プロセス
ここでは設計とプロセスについて具体的な調査手法について解説します。
調査目的の設定と仮説構築
調査は「何を明らかにしたいのか」を起点に設計されます。目的に基づいて仮説を立て、それを検証するための調査設計が求められます。
例:「若年層の購買頻度が高いのはSNS広告の影響ではないか」という仮説を立てます。
サンプリングとモニターパネル設計
誰に調査を行うかを決定し、対象者の属性や人数、抽出方法を設計します。
例: 全国の20〜30代女性500名を対象にオンラインアンケートを実施します。
調査票・インタビューガイドの作成
調査目的に沿って、質問項目やインタビューフローを設計します。誤解を招かず、必要な情報を引き出すための構成が重要です。
データ収集と品質管理
収集段階では、不正回答や重複を防ぎ、信頼性のあるデータを確保する体制が求められます。
例: IPアドレス制限やロジックチェックを導入したWebアンケートを実施します。
分析計画の立案
どのようにデータを分析し、どのような結論を導くのかを調査前に想定しておくことで、調査後の行動につながるインサイトが得られやすくなります。
定量・定性調査の使い分けと組み合わせ
ここでは定量調査、定性調査の特徴を生かした調査手法について解説します。
課題別調査手法選択のポイント
「市場全体の傾向を把握したい」なら定量調査、「新商品のアイデアを探りたい」なら定性調査、といった具合に、調査目的に応じて手法を選びます。
ミックスリサーチ事例
定性→定量の活用フロー
少人数インタビューで仮説を形成し、それを大規模アンケートで検証を行います。
例: 数名のインタビューから導いた「味の濃さが購買理由」という仮説を、1000人アンケートで検証します。
定量→定性の活用フロー
アンケート結果から特定の傾向を発見し、なぜそのような結果が出たかを深堀します。
例: 購入意欲が高い層が30代女性に集中していたため、その層にインタビューを実施します。
調査実践のポイントと留意点
最後に定量調査、定性調査のポイントと注意点について解説します。
定量調査でのバイアス・サンプル偏りへの対策
設問の順序や選択肢の表現に気を配るのはもちろんですが、定量調査ではバイアスやサンプルの偏りも起こりやすいため、無作為抽出やウェイト調整で偏りを補正します。
定性調査でのモデレーター技術と分析の注意点
定性調査は質問者であるモデレーターにも依存しやすいため、調査対象者の本音を引き出すための信頼関係構築と、主観に偏らない解釈スキルが求められます。
データ品質・信頼性担保の方法
上記の定量、定性調査の留意点を含めて、回答の妥当性チェック、不正防止策、複数手法によるトライアングレーション(相互検証)などで信頼性を高めます。
まとめと今後の展望
オンライン調査・AI活用などの最新トレンド
近年はオンライン調査が主流となり、チャットボットを活用した調査や、AIによる自由記述の分析技術も進化しており、これらを用いた調査方法も用いると良いでしょう。
調査技法の進化と今後の活用シーン
定量・定性それぞれの枠を超えた手法が登場しており、例えばAIを用いた感情分析や画像認識を組み合わせた新しいインサイト抽出手法も注目されています。今後も技術とともに調査は進化し、マーケティングや商品開発、サービス設計などあらゆる場面で活用が期待されています。
結びとなりますが、本記事で学んだことを元に少しでも有益な結果が得られる調査に繋げていただけると幸甚です。
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