行動経済学から読み解くインサイトリサーチの新常識:人はお金で動かない?株式会社デコムのアプローチ | 株式会社デコム
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行動経済学から読み解くインサイトリサーチの新常識:人はお金で動かない?株式会社デコムのアプローチ

マーケティングにおける「顧客理解」は、いまだ表層的なニーズの把握に留まるケースが多く見受けられます。株式会社デコムは、n=1リサーチを軸に、行動経済学を活用しながら、人間の不合理な意思決定プロセスに深く切り込み、より精度の高いインサイト抽出を実現しています

本記事では、株式会社デコムのランチタイムセミナー「報道経済学から学ぶインサイト講座」をもとに、同社の独自手法や成功事例、実践ノウハウを詳しく解説します。

behavioral economics

行動経済学が照らす「不合理な顧客心理」

マーケティング担当者の多くは、「消費者は合理的に意思決定する」という前提で施策を立案しがちです。しかし実際には、人間の合理性は限定的です。これを科学的に解き明かしてきたのが行動経済学です。

行動経済学の代表的な理論には以下のようなものがあります。

平均への回帰

リチャード・セイラー氏(ノーベル経済学賞受賞)は、映画『マネー・ショート』の中で次のように例えました。

「スリーポイントを連続で決めている選手は、次も決めるだろうと観客は期待するが、合理的には『そろそろ外す』と考えるべきである」

このように、人は確率を正しく認知できず、直近の印象に強く左右される傾向があります。

社会規範と市場規範

有名な実験では、保育園の遅刻罰金制度が導入された結果、遅刻者が逆に増加しました。

  • ・導入前:「迷惑をかけたくない(社会規範)」
  • ・導入後:「お金を払えば良い(市場規範)」

このように、市場規範のほうが人の行動に強く影響することが示されています。

プロスペクト理論とナッジの実践

人間は損失を利益の約2倍重く評価する傾向があります。たとえば、ワクチン接種通知文の文言を、

  • ①「〇日までなら無料です」
  • ②「期限後は有料になります」

と変更したところ、②の方が接種率が高まる結果となりました。これは「ナッジ(nudging)」と呼ばれ、政策やマーケティングで広く活用されています。

インサイト発見の実践事例:幼児教材のケース

デコムが手がけた具体的な事例を紹介します。

問題背景

ある幼児教材企業が新規顧客獲得に苦戦していました。通常の定量調査では「価格が高い」「物が増える」といった定番の入会しない理由が挙がっていました。

深堀インタビューで本質的な不満を発見

「半額・物が増えないなら入会するか?」と問うても、消費者は「そういう問題ではない」と回答。合理的理由の背後に感情的欲求が隠れていると考えたデコムは、育児での幸福体験を尋ねました。

すると、ある母親はこう語りました。

「夫が子供と遊ぶ姿を眺めた時、子供を産んでよかったと感じる」

ここから浮かび上がったのが、「これ以上生活に”ちまちま”を増やしたくない」という感情でした。育休でダイナミックだった社会人生活と比較し、細々した教材作業がさらに閉塞感を強めていたのです。

ブランド再定義でV字回復

この「ちまちまインサイト」を起点にブランド価値を再定義。「ダイナミック体験を提供する教材」として打ち出し、アウトドアを活用したCMを展開。結果、新規獲得効率と継続率が大幅に改善しました。

※ 「ちまちまインサイト」参考記事:お客さまを理解し、感動と驚きを届けたい

インサイト発見は「アート&サイエンス」

デコムはインサイト抽出をアート&サイエンスのプロセスとして整理しています。

【アート要素】

  • ・n=1事例の収集
  • ・仮説構築スキル

【サイエンス要素】

  • ・統計的検証
  • ・行動経済学的視点

この具体→抽象→具体プロセスをAIに再現させたのがデコムAIです。心理学の投影法も応用し、顕在化しにくい欲望やバイアスまでも定量的に分析可能としています。

実践支援プログラムの紹介

デコムでは、実務者育成のために多様なプログラムを提供しています。

  • ・インサイトフル(HRアワード入賞):11のスキルを偏差値的に可視化する教育プログラム
  • ・インサイトスクール:6.5時間で集中学習できる実践講座
  • ・n=1インタビュー実践プログラム:研究開発部門向けに、顧客と自ら向き合うスキル習得を支援

チームの共通言語を育てる

インサイトという抽象概念はチームでの目線合わせが難しい課題がありますが、体系立てた研修プログラムは、共通言語の醸成・コミュニケーションの精度向上に大きく寄与しています。

また、参考書籍として『欲しいの本質』(宣伝会議刊)も高く評価されています。

※「欲しいの本質」参考記事:ロングセラー「欲しいの本質」が宣伝会議2024年「書籍ランキングベスト10」にランクイン!

まとめ

株式会社デコムは、行動経済学×n=1リサーチという独自のアプローチで、消費者心理の深層に迫るインサイトリサーチを実践しています。表面的ニーズに惑わされず、真の欲求を掴みたいマーケターやリサーチャーにとって貴重な知見となるでしょう。アート&サイエンスをAIで実践する「デコムAI」にも注目です。詳細は株式会社デコム公式サイトよりお問い合わせ・資料請求ください。

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参考:今回のセミナーで使われた用語の定義

【定義】インサイト:本人も無自覚で言葉にできない潜在的欲求や心理のこと。
【定義】n=1リサーチ:一人の生活者を深く観察し、普遍的なインサイトを導き出す調査手法。
【定義】デコムAI:具体→抽象→具体のプロセスをAIが再現し、大量の定性情報を分析するシステム。
【定義】行動経済学:人間の不合理な意思決定や認知バイアスを科学的に解明する経済学の分野。
【定義】プロスペクト理論:損失回避の心理を中心に人間の意思決定を説明する行動経済学の理論。

参考:今回のセミナーのFAQ

Q1. デコムのインサイトリサーチの強みは?
A. n=1リサーチによる個人深堀と、行動経済学を活用したバイアス分析に強みがあります。

Q2. インサイトはなぜ表面的なアンケートで拾えないのですか?
A. 消費者は自分の欲求を言語化できないケースが多く、感情や文脈に隠れた本音が存在するためです。

Q3. デコムAIはどのように活用されていますか?
A. 具体→抽象→具体の思考プロセスをAIが再現し、仮説抽出からアイデア開発まで支援しています。

Q4. 行動経済学はマーケターに役立ちますか?
A. 非合理な消費者心理を理解することで施策設計の精度が大きく向上します。ナッジ活用例が好例です。

Q5. 教育プログラムはどのような企業が利用していますか?
A. 事業会社のマーケティング・商品開発・研究開発部門など幅広く導入されています。

 

会社紹介

株式会社デコムは、インサイトリサーチを専門とする企業として、2004年に設立され、現在21期目を迎えています。「世界中の人々の声なき声を形にする」というパーパスと、「気持ちいい未来をデザインする」というビジョンのもと、事業を展開しています。

デコムは大きく以下の3つの事業を運営しています。

  • ・インサイトリサーチ事業(プロによる調査支援)
  • ・教育研修事業(社内実践人材の育成)
  • ・TrendbanKメディア事業(定性情報配信プラットフォーム)

さらに、デコムAIによるAIを活用したインサイト抽出システムも開発・提供しており、具体→抽象→具体の思考プロセスをAIが再現する独自技術で高精度なインサイト分析を可能にしています。

2006年には日本初のインサイトリサーチ専門書を出版し、アジア各国でも翻訳出版され、同分野の先駆け企業として高い評価を得ています。

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