潜在ニーズとは、顧客自身が明確には認識していない、隠れたニーズを指した言葉です。潜在ニーズを表面化させるには、顧客に的確な質問を投げかけて意識させた上で具体化することで引き出すことができます。
本記事では潜在ニーズについて解説するとともに、顕在ニーズとの違い、そして潜在ニーズを引き出す手法について詳しく解説します。
また、質問例についても解説、紹介いたしますので、あなた自身のマーケティング活動を推進するべく、本記事を是非ご活用ください。
顧客は潜在ニーズを抱えている
潜在ニーズとは?
潜在ニーズとは、消費者自身が自覚していない、または明確に言葉にできていないニーズです。消費者が日常生活の中で「なんとなく不便だ」「もっとこうなればいいのに」と感じてはいるものの、具体的な解決策を求めてはいないのはもちろん、商品・サービスとしても認識をしていない欲求でもあります。
例えば、スマートフォンが登場する以前は人々は「写真、動画が撮影できるだけでなく、電子データのやりとりができる高機能な電話が欲しい」と明確に思っていたわけではありませんでした。しかし、スマートフォンが登場すると、それが便利であることに気づき、瞬く間に普及しました。
このように、企業が消費者の潜在ニーズを掘り起こすことは商品・サービスを提供することに繋がり、新たな市場が生まれるきっかけにもなるのです。
ニーズとウォンツ
マーケティングにおいて、ニーズ(Needs)とウォンツ(Wants)は以下のように区別されます。
- ニーズ(Needs):本質的な欲求や必要性。例えば「移動したい」「健康を維持したい」など。
- ウォンツ(Wants):ニーズを満たすための具体的な手段や選択肢。例えば「高性能な電動自転車が欲しい」「オーガニック食品を食べたい」など。
ニーズは人間の根源的な欲求であるのに対し、ウォンツは文化や個人の価値観によって形成されます。端的に言えばニーズは「目的」、ウォンツは「手段」だと言えます。
そして、多くの潜在ニーズはまだ顕在化していないため、消費者自身が「ウォンツ」として表現することが難しいのです。
潜在ニーズとインサイト
潜在ニーズにおけるインサイト(Insight)とは、消費者の心理や行動の奥底にある本質的な気づきや洞察のことを指します。潜在ニーズを発掘するためには、消費者の言葉にならない不満や願望を深く理解して、インサイトを見つけ出すことが重要だと言えます。
例えば、流行りのカフェであれば「コーヒーを飲みたい」というニーズだけでなく、「居心地の良い空間でリラックスしたい」「ついでに仕事を行いたい」という潜在ニーズに着目し、その結果、単なるカフェではなく、ゆったりとくつろげる空間やWifiなどのネットワーク環境を提供することで、多くの人々の支持を得ることに成功しています。
このように、企業が成功するためには消費者の表面的な要求だけでなく、その裏にある本当の欲求(インサイト)を見極め、それを満たす商品やサービスを提供することが求められると言えます。
顕在ニーズとの違い
顕在ニーズとは?
顕在ニーズとは、消費者が自覚しており、具体的な形で表現できるニーズのことを指します。潜在ニーズと違い、顕在ニーズはすでに認識されているため、消費者は自ら情報を探し、適した商品やサービスを求めることが多いです。
例えば、「スマートフォンのバッテリー持ちが悪いので、長時間使えるモデルが欲しい」という欲求は顕在ニーズの一例です。この場合、消費者はすでに自分の問題と目的を把握しており、それを解決するための手段を探しています。企業にとっては顕在ニーズを満たす商品やサービスを提供することで、ライバル企業との競争力を高めることができます。
潜在ニーズと顕在ニーズの違い
潜在ニーズと顕在ニーズの違いを理解することは、マーケティング戦略を立てる上で非常に重要です。
以下の表は潜在ニーズと顕在ニーズの違いをまとめたものです。
潜在ニーズ | 顕在ニーズ | |
認識度 | 消費者自身が自覚していない | 消費者が明確に自覚している |
表現のしやすさ | 言葉にしにくい | 具体的な形で表現できる |
アプローチ | 消費者の行動や心理を深掘りし、インサイトを見つける | 既存のニーズに合った商品・サービスを提供する |
例 | 「もっと快適に通勤したいが、どうすればいいかわからない」 | 「電動自転車を買いたい」 |
潜在ニーズを掘り起こすことで新たな市場を開拓することができますが、顕在ニーズに適した商品・サービスを提供することも重要です。
企業は両者を適切に見極め、それぞれに合ったアプローチをとることが成功の鍵だと言えます。
潜在ニーズを見つける、引き出すには?
顧客に質問してみよう
潜在ニーズを見つける、引き出すためには、顧客に適切な質問をすることが重要です。顧客は自分自身の課題や理想の解決策を明確に認識していないことが多いため、具体化しやすい、回答しやすい質問を投げかけましょう。
例えば以下のような質問を行うことで、隠れた欲求を引き出すことができます。
- 「日常生活の中で不便だと感じることは何ですか?」
- 「もし理想的な解決策があるとしたら、それはどのようなものですか?」
- 「現在利用している製品やサービスで、不満や改善してほしい点はありますか?」
- 「過去に困った経験やストレスを感じたことは何ですか?」
これらの質問を通じて、顧客自身が気づいていなかったニーズが浮かび上がることがあります。企業はこうした情報をもとに、より適した商品・サービスの開発やマーケティング戦略を立てることができます。
潜在ニーズを引き出す手法
潜在ニーズを見つけるためには、顧客に質問するだけでなく、以下のような手法を活用することも効果的です。
1.インタビュー
顧客との対話を通じて、普段の生活や価値観を深く掘り下げます。オープンエンドな質問を行うことで、顧客の意識していないニーズを引き出します。
2.行動観察(エスノグラフィー調査)
顧客の生活や行動を直接観察することで、言葉では表現されない隠れたニーズを発見します。例えば、買い物の仕方や製品の使い方を観察して、行動の中に潜む課題を見つけます。
3.心理学の投影法(文章完成方法/ビジュアル刺激法)
心理学の手法を使い、顧客の無意識のニーズを探ります。例えば、未完成のストーリーを見せて続きの内容を自由に考えてもらうことで、深層心理にある欲求や問題意識を引き出します。
4.プロトタイピングとテスト
アイデアを素早く形にして、顧客に試してもらうことでフィードバックを得ます。実際に体験することで、顧客自身が気づいていなかったニーズが明らかになります。
質問も含めてこれらの手法を組み合わせることで、より多角的に潜在ニーズを発掘し、革新的な商品やサービスを生み出すことが可能となります。
潜在ニーズを引き出すポイント
最後に、潜在ニーズを引き出すポイントについて解説します。以下のポイントを踏まえて質問、及び上記の手法を実施しましょう。
1. 広く人間を見に行く(近視眼にならない)
市場や業界の枠や自社の製品やブランドの範疇にとらわれず、異なる視点を持つことで潜在ニーズを発見しやすくなります。特定のターゲット層だけでなく、様々な人々の生活や行動を観察することで、新たな発見につながります。消費者の興味に寄り添う質問を行いましょう。
2. 直接ニーズがあるかと聞かない
消費者に「どんな商品が欲しいか」を直接尋ねても、表面的な答えしか返ってこないことが多いです。そのため、日常の習慣や価値観について質問し、なぜその行動を取るのかを深掘りしていくことで、本当の潜在ニーズを引き出しましょう。
3. 消費者が抱く価値と比較
「利便性」と「安心感」など、相反する価値のどちらを重視するかによって求められるサービスや商品の方向性が異なることがあるように、消費者が大切にしている価値観を見極め、それを企業が抱いている価値と比較、分析することで潜在ニーズが浮き彫りとなるでしょう。
潜在ニーズを引き出した事例
以下はデコムにおける潜在ニーズを引き出した事例です。合わせてご覧ください。
事例:小田急不動産
振り返ってみると、暮らしにおける利便性などはニーズを分析する上でわかりやすい尺度でしたが、感情をベースに動いている結果のように見えて、実は意外とそうではないということもあったりしました。ですので、インサイトリサーチを用いることでより深い情緒を起点にした企画を立案でき、我々が提供する商品がお客様の感情を動かすものになっていくのではないかと感じています。
【インサイトリサーチ事例】次世代の暮らしに求められる本質価値とはなにか 生活者の想いをカタチに戸建て・マンションを企画する新挑戦|小田急不動産様
まとめ
潜在ニーズを理解するには、単なるニーズとウォンツの違いを認識するだけでなく、深いインサイトを発掘する必要があります。
また、顕在ニーズとの違いを理解し、どのようにアプローチするかを見極めることも重要です。
企業は、消費者の言葉にならない不満や願望に耳を傾けて潜在ニーズを引き出し、形にすることで革新的な市場を生み出すことができるでしょう。
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