調査設計とは?
調査設計とは、マーケティングリサーチを行う際に「何を目的とするか」「どのような調査を実施するか」を計画するプロセスです。この段階で目的や課題を明確にすることで、効果的なデータ収集と分析が可能になり、調査の信頼性が向上し、得られたデータが意思決定に役立つものとなります。逆に、計画なしに調査を進めると、必要な情報が得られなかったり、分析結果が適切に活用されないことがあります。
調査設計の重要性と役割
調査設計の目的
調査設計の主な目的は、調査の課題を明確にし、適切な手法と対象者を選定することです。これにより、調査結果が実際の意思決定や戦略策定に有効なデータとして活用でき、更に調査の計画を慎重に立てることで、データ収集の効率が向上し、調査にかかるコストや時間を最適化することができます。特に市場調査では、正確なデータの取得が事業の成功に直結するため、調査設計の精度が非常に重要となります。
市場調査の流れにおける調査設計
市場調査は以下のプロセスで進められることが一般的です。
- 1. 課題・目的の明確化
- 2. 調査内容の企画
- 3. 調査票の作成
- 4. 調査の実施
- 5. データの集計・分析
- 6. レポート作成
この流れにおける1と2の部分が調査設計と呼ばれる段階です。この段階を疎かにして目的や対象を明確にしないままに進めると、適切なデータを収集することができず、結果として分析の信頼性が低下する可能性があります。そのため、調査の計画段階でリサーチの焦点をしっかり定めることが重要です。
実施設計とは?
実施設計とは、調査設計で策定した計画を具体的に実行に移すための詳細な準備プロセスです。調査の成功は計画だけでなく、それをどのように実施するかにもかかっています。実施設計では、調査票の作成、調査員のトレーニング、データ収集方法の確定などが含まれ、適切な実施設計を行うことでデータ収集の精度が向上し、調査結果の信頼性を高めることができます。
調査設計と実施設計の違い
調査設計は「何を」「なぜ」行うのかを決定するプロセスであり、調査の全体的な枠組みや戦略を策定する段階です。一方、実施設計は「どのように」調査を実施するかを具体的に計画するプロセスであり、調査設計とは別のプロセスとなります。これらを明確に分けて考えることが調査全体の精度を向上させるだけでなく、適切なデータ収集の鍵になります。
調査設計の手順
次に実際に調査設計を行う際に踏むべき手順について紹介します。
1. 課題の明確化
始めに、調査を行う背景やマーケティング上の課題を明確にします。例えば、「新商品の売上が予想より低い」といった問題がある場合、その原因を探るための調査が必要になります。どのようなデータが課題解決に向けて必要かを明確にすることで調査の方向性が決まり、不必要なデータ収集を防ぐことができます。
2. 調査目的の設計
次に、調査を通じて何を明らかにしたいのかを具体的に設定します。表面的な問題の指摘ではなく、根本的な原因の特定を意識することが重要になってきます。問題に対して「なぜ?」を繰り返すことがポイントとなります。調査目的を明確にすることで、得られたデータをより実践的に活用する際に非常に使いやすいデータを集めることができます。
3. 現状分析
その次のステップでは、市場環境や自社製品の状況を分析し、調査の方向性や焦点を明確にするための基礎情報を収集します。自社のサービスや商品が市場のどのような立ち位置にいるのか、強み、弱みを分析することで、自社サービスや商品の現状の市場での位置付けと目指すべき商品、サービス像との違いを明確化することができます。正確な現状分析を行うことで、どのような調査が合理的かつ戦略的なのかわかりやすくなります。
4. 仮説構築
現状分析を基に、問題の原因や解決策に関する仮説を立てます。仮説があることで調査の焦点が明確になり、効率的なデータ収集が可能になります。ただし、ここで注意しないといけないのは仮説はあくまで仮説であるため、始めに思いついたものが正解かどうかわからないという点です。そのため仮説は1つに断定せず2〜3個立てておく方が望ましいです。
5. 調査後のアクションの想定
調査結果をどのように活用するのかを事前に想定し、調査の目的や手法をより具体化します。仮説が正しかった場合、正しくなかった場合、それぞれの場合において裏付けの元に、その後にどのような行動をするのかを事前に計画しておくのです。また、ここでの行動については、理想を高くし過ぎない、現状に流され過ぎない、という2つのポイントを抑えることで、調査が終わった後に、よりスムーズに次の行動に移ることができます。
6. 調査計画の作成
対象者、手法、スケジュール、予算などを詳細に計画し、調査の実行段階での混乱を防ぎます。調査の目的をはっきり意識した上で実際のサンプルを考慮して計画していくことが重要となってきます。計画をしっかり立てることで、調査の精度と効率を向上させることができます。
調査設計の手法
以下、具体的な調査方法についてまとめました。どの手法が良いのかを自身の調査の目的や課題を元にして選択してください。
アンケート調査 | インタビュー(対面調査) |
対象者に質問して回答を得る、一般的な市場調査手法。
・利点:低コストで実施可能。 ・適用場面:ブランドイメージや顧客満足度の大規模調査に適している。 ・注意点:質問内容によっては、回答が偏る可能性がある。 |
調査員と対象者が対面で行う市場調査。
・利点:回答に応じて柔軟に質問を変更可能で、質の高い情報を得られる。 ・形式:グループインタビューは複数人で実施し、デプスインタビューは1対1で実施。 |
街頭調査 | ネットリサーチ |
電話を通じて対象者の意見や感想を聞き出す市場調査方法。
・利点:電話がつながれば即座に回答を得られるため、短期間で調査が可能。また、質問次第で、顧客の気づいていない本音を引き出すことも可能。 ・活用例:民間企業、政府機関、自治体。 |
インターネット上で質問やアンケートを行う市場調査方法。
・利点:全国から情報を収集可能。集計が簡単で、短期間で調査が可能。 ・注意点:謝礼目的で不真面目な回答をする人がいる場合がある。また、誤差を考慮してデータを活用する必要もある。 |
ホームユーステスト | ショップアロング調査 |
顧客に実際の商品を使用してもらい、感想や意見を収集する市場調査方法。
・利点:実際に使用した上でのリアルな意見を集められる。 ・適用場面:商品の満足度や改善点を調査したい場合に適している。 ・活用例:化粧品、食品、ペット用品、家電製品など。 |
対象者の買い物の様子を観察し、その後インタビューを行う市場調査方法。別名で「アカンパニードショッピング」や「顧客観察調査」とも呼ばれる。
・特徴:購買時の心理や行動をその場で探ることが可能。 ・事例:マクロミルが店頭購買分析や視線データの定量分析を提供。 |
※ 参考記事:市場調査とは何か:求められているニーズを顕在化する手軽な手法
調査設計における注意点
調査設計を行う際には、いくつかの重要な点に注意する必要があります。
- 調査の目的を明確にし、それに最適な手法を選択することが不可欠です。目的と手法が一致していなければ、収集したデータが適切に活用されない可能性があり、調査の目的を詳細に分析し、それに基づいた手法を選定することが求められます。
- 調査の公平性を保つためにバイアスを回避することが重要です。調査対象者の選定や質問の設計において、意図しない偏りが生じないよう注意を払う必要があり、例えば、回答者の属性が一部に偏ってしまうと、調査結果が全体を正しく反映しない恐れがあります。また、仮説に固執するあまり勝手な解釈をしてしまうことにも注意しましょう。
- 収集したデータの信頼性を確保することも重要な要素の一つです。データが正確であるかを検証し、不適切なデータは排除することで、調査結果の精度を向上させることができます。データの収集方法や記録の仕方に関しても、統一された基準を設けることで信頼性を向上させることが可能です。
- サンプルの適切な設計も調査の成功には欠かせません。十分な母数を確保することで統計的な信頼性を高めるだけでなく、対象者の特性が調査目的に合致しているかを事前に確認することで、より精度の高いデータを得ることができます。
- 調査結果の活用を見据えて計画を立てることが大切です。調査の結果がどのように活用されるのかを事前に想定し、データの整理や報告の方法を工夫することで、より実用的な調査を行うことが可能になります。結果が企業や組織の意思決定にどのように貢献できるかを考えながら、調査設計を進めることが重要です。
これらのことに注意しながら調査設計を行い、市場調査に望んでください。
まとめ
調査設計はマーケティングリサーチの成功において不可欠なプロセスです。適切な手順を踏み、目的に応じた手法を選択することで、効果的な調査が可能となります。調査後の活用を見据えた上で戦略的に設計することが重要であり、計画を慎重に立て、精度の高いデータを取得することによって企業の意思決定をより確実なものにすることができます。是非この記事を元に調査設計に取り組んでいただけたら幸いです。
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